遍路

結願

六十日目。 霧雨のなか 最後の遍路道を登り、2時間ほど歩くと 寺らしき瓦が見えてきた。 88番大窪寺 最後の読経を終え、 ぼろぼろになった菅笠を奉納した。 大窪寺の前で心地の良い、とても長い休憩を取った後、 さて行くかと、1番に向かって数10m歩いたとこ…

次のことを考える

五十九日目。 夜、激しい雨が降った。10日ぶりの雨。 洗濯ものは風で全部飛ばされて無惨。 86番志度寺。寺はあと二つになった。 雨上がりの午前、ものすごい数の蚊にさされた。 まじめに気がどうにかなりそう。 87番へは、もったいないからゆーっくり歩いた…

高松市街

五十八日目。 もったいないな、と思う。 終わってしまうことが。 いつのまにか札所も80番台になり、 残りの寺も数えられるほどになった。 遠い、まだまだ先と思っていた屋島寺が次の札所だなんて。 遠くに屋島が見える。 印象的な山の形。 高松市街地はこれ…

念彼観音力

五十七日目。 居間から81番白峯寺と82番根香寺がある山が見える。 今日も暑そう。 後輩に見送られて 国分寺の前の角を曲がった途端に 「ちょっと待って」とおばちゃん。 「いい顔してるから」と1000円のお接待。 と、横を通り過ぎるきれいな欧米人遍路。 今…

高松市

五十六日目。 道しるべステッカー 横断歩道かけっこ 79番天皇寺でお経を唱えた後 振り返ると、唱え終わるのを待っていたらしい 年配のご夫婦が、錦札をくれた。 あんまりお札に執着はなかったのだけれど、 ちと嬉しい。 80番国分寺に12時に着いて、 今日は歩…

さびしさ

五十五日目。 朝の善通寺。 このところ、渇水の話をよく耳にする。 早明浦ダムの貯水率が0%で、このままいくと断水になるのだとか。 でも僕が気にしているのは、四日後に来るらしい台風のことで。 ちょうど88番結願のころだろうか、と やたらとかかる日数…

捨身ヶ嶽禅定

五十四日目。 71番弥谷寺、早朝。 粘っこいクモの巣をいくつも頭に絡ませて遍路道を抜けると かわった形をした山が現れる。 香川に下りて来た時、 奇妙な形をした山がいくつも目に付いた。 徳島、高知、愛媛の山はどれも連なっていたけれど、 ここ香川の山は…

観音寺市

五十三日目。 早朝、観音寺の裏手にある小高い山を登ると 眼下に「寛永通宝」が。 ここは同じ境内に68番観音寺と69番神恵院が並ぶ なんか得した気になる札所。 でも納経代はしっかり二つの札所分600円。 そりゃそうだろうな。 観音寺をバックに70番本山寺に…

雲辺寺を下ると

五十二日目。 畳と布団と浴衣、これがどうも落ち着かなくて 朝方にようやく眠れた。 5時半に朝飯。 自分で炊かなくても朝から御飯がたっぷり食べられる 嬉しさよ。 ご主人に見送られながら6時半出発。 さて、雲辺寺山に登るか。 先に出発していた同宿の方々…

受けた恩は

五十一日目。 標高480m、65番三角寺は思っていたよりも近かったけれど、 ひどく体が疲れていて、寺でのんびり時を過ごした。 この、いつでも5時間ぐらいは寝られそうな 疲れの蓄積具合。遍路に帰ってきたな、と思う。 山を下る途中に、休憩所があったので 昼…

秋の気配

五十日目。 昨夜は、三十四回も八十八か所をまわっているおっちゃんと 話をした。一回3万円ぐらいで周っているらしい。 A 托鉢をして糧を得る B 知り合いをめぐって糧を得る 3万円で抑えるには、どっちかなのだけれど Aは寺から疎まれて四国に居づらくなる。…

復帰

四十九日目。 3週間ぶりに遍路に戻ってきた。 昨日は着いたのが遅かったので、そこらで適当にテント張って寝た。 が、予想通り眠れなかった。 自信がついたからか、 実家に居た3週間の間、薬にはほとんど頼らない生活ができていて、 それなりに頭は整理して…

横峰寺

四十八日目。 達成感というのは このことを言うのだろう。 60番横峰寺 登山は思っていたより楽だったけれど、 区切りにふさわしい気持ち。 まだ歩けそうという気もするけれど とりあえずは、ここまでいいかと思う気持ちが強く。 前に区切った、土佐国分寺の…

横峰寺口

四十七日目。 今日は60番横峰寺への登山道入り口にある 標高300mの小屋に泊まる予定。 そして明日の早朝、745mの横峰寺へアタックだ。 今日は20km程度歩けばいい。 あまり歩かなくていいと思ったら、雨がぱらついていた せいもあり、体がだるくて30分ごとに…

今治市

四十六日目。 横峰寺で区切れるかどうかは、今日の頑張り次第。 54番延命寺 55番南光坊 56番泰山寺 57番栄福寺 58番仙遊寺 ぶっ続けに今治の5つの札所を巡ると 普段はたどり着くだけで力が蘇るお寺に居ても 逆にどっと疲れてゆき、 なにがきついって、58番仙…

今治へ

四十五日目。 あと4日で徳島に一度帰る。 1カ月に一度帰ると決めていたから、なんとか続けられたのかもしれず。 そのあたりは、とてもナイーブなところ。 さてせっかく足ができているので、札所で3番目の標高にある60番横峯寺は 今回行っておきたい。 逆算す…

道後温泉

四十四日目。 朝起きると、和尚の姿はなく。 「お経を唱えるときは真剣勝負。」 「真剣勝負してみなさい。」 そんな言葉が頭に残っていて。 49番浄土寺、50番繁多寺 他の参拝客など関係のない真剣勝負。 家族や自分の健康も安全も何も願わず、 ただ懸命に唱…

松山市

四十三日目。 三坂峠。 緩い上り坂を700mまで上る。 なんだか、僕って坂道の方が速いんじゃないかと思う このごろ。 1km間隔の標識から標識まで思いっきり早歩きしてみると11分。 室戸時代より確実に速くなっている。嬉しい。 坂の途中のドライブインで昨日…

生まれて

四十二日目。 高原の夜ってこうなるのか。 寝不足と、夜の冷え込みで風邪をひいた。 今日は45番岩屋寺に行くだけにしよう。 岩屋寺は中国の桂林のような奇岩がボコボコならぶ 山奥にある。車で参道の下まで行けるけれど そこからは誰もが急峻な道を登らなく…

久万御用木まつり

四十一日目。 朝5時前に善根宿を出た。 連日の日中の暑さに辟易して 朝方に距離を稼いでおきたかったし、 今日は峠を越える予定なので 時間に余裕が欲しかった。 7時すぎには、もう10kmを歩いていて。 このへんに大江健三郎の生家があるんだと 散歩中のおっ…

大洲市

四十日目。 ゴーヤ氏といると存在を問われているようで 妙にしんどい。 会わない様に大回りして進み、ダイソーで 時間潰して。 さぁ、さすがにこれでだいぶ離れただろうと 歩き出して数分、 「おーい」 神出鬼没。 献血カーからゴーヤ氏。 「ポンジュース、…

助けられてありがとう

三十九日目。 一人で歩きたかったので、 ゴーヤ氏と微妙に距離をとって歩く。 43番明石寺 ゴーヤ氏に遭遇。 国道沿いでうな丼の看板に見つめられていたところ ゴーヤ氏に再遭遇。 その後は一緒に歩いた。 別に嫌ってるわけじゃない。 遍路小屋にあったノート…

助けられて

三十八日目。 久しぶりの都市部は 妙に居心地が悪い。 宇和島名物の闘牛も見ずに 朝のうちに市街地を抜ける。 41番龍光寺。参道の休憩所で 100回以上まわった人がお寺に納める錦札。 有難がられて、こうやってコレクションする人もいる。 僕は初心者なので白…

続ゴーヤマン

三十七日目。 Oさんが先に出て、 ゴーヤマンがそれに続き、 最後に撤収に手間取っていた僕が残った。 装備に恵まれている反面、行動は鈍くなる。 寝床にしていたゴザをまるめて、 その先をホウキにして、ヨモギの燃えカスを 掃除していったゴーヤマン。 最低…

ゴーヤマン

三十六日目。 夜中、雷を伴って大雨がふり、 寝床のトタン屋根はすさまじい音をたてていたけれど、 気がつくと朝だった。 どうやら眠れたらしい。 朝一テントを出るときの足の痛みは相変わらず、 けれど心の方はそう痛んではいなかった。 7時前に出発。 ひめ…

発作の向こう

三十五日目。 あせも対策にはベビーパウダーがいいよ、とOさん。 どんな風に使うのか見ていたら、指でつまんで ロージンバッグのように手にまぶし、 豪快に股や背中に擦り込む。 湿っぽい空気を忘れさせてくれる優しい香りが広がる。 いいなぁ、次にでっかい…

死地を求めて

三十四日目。 ダムで一人というのは、なかなか心細いものだったけれど ちゃんと眠れた。 毎日毎日、今日はちゃんと眠れるかどうかばかり考えている。 寝るために歩いているように思えてくる。 39番延光寺に午前中についた。 これで、長かった修行の道場も終…

珊瑚

三十三日目。 朝7時半に朝食をいただきに、丘から下りた。 珊瑚の加工品を売っているというご夫婦。 日本の珊瑚の大部分が宿毛市にあつまるということや、 ミッドウェー産、地中海産、土佐産 の見分け方を教えてもらった&珊瑚のアクセサリーを いただいた。…

三原村

三十二日目。 目が覚めると テントの外が紫色だった。 夜が明けると見慣れた世界。 朝飯代わりの粉ミルクをつくりながら 近くでテントを張っていたフランス人カップルと話す。 日本にはいつまで?ときくと、 「四国にこの前きて、これから北海道に行って 1カ…

草をひく

三十一日目。 夜中の大雨で目覚めた以外は、 久々の屋内のおかげで熟睡。 「おーい、作業始めるぞー」と、あぁもう7時か。 池の小島の草を抜く。 どういう風に抜けばいいですか?と聞くと、 「やりたいようにやればいい」と。 ↓ やりたいように草を抜くのは…