遍路

雨水風呂

三十日目。 波音から一刻も早く逃れたかった。 6時にテントを畳んだ。 久々にテントに朝露がついている。 ほんとに地球ってのはめまぐるしく活動しているもんだ。 朝飯のパンを買い忘れて 空腹のまま歩いたけれど、店がなくて参った。 米を炊けばいいけれど…

帰りたくなった

二十九日目。 スナックパンを数本食べて出発。 7時ぐらいまでに何km歩けるかで その日歩ける距離が決まる。 まぁ、ゆっくりいけばいいんやけど 今日こそは60000歩、40km歩こう という気持ちもどこかにある。 こころへんの川はどれもきれいだった。 足をつけ…

仙人登場

二十八日目。 今までで一番の快眠を得て またもや一週間の壁をクリアした僕は このとき、心から気分爽快だった。 朝、トイレに向かうと 駐車場はサーファー仕様のハイエースだらけ。 そういや、今日は日曜か。 さらに海の日か。 遍路の白衣は浮きまくりだな…

絶景

二十七日目。 なんなんだ、小屋の隣のコカコーラの自販機は! 宇宙人みたいなピコピコ音を夜通し鳴らしやがって、 気持ち悪い。 おかげで寝不足。 今日から学校は夏休みのようで 朝方、すれ違い際に「おはようございます」と声をかけてくれる 田舎の小中学生…

有り難い2

二十六日目。 昨夜、 横になって、さぁ寝ようかという9時頃 人の気配がしてテントを出ると遍路装束のおじさん。 こんな時間に人が来ると思っていなかったので 山側のいい場所にテント張ってしまっていて。 夜中、車が水しぶきをあげるごとに 車道側で寝てい…

有り難い

二十五日目。 朝6時半 昨日の人は近くの喫茶店のご主人で 立派な朝食をごちそうになり、そのうえ、おにぎりを持たせてくれた。 有難い。ほんと。 ここの物産品売り場で米1.5kgを買った。 ちと重い。 ラジオを聞くと 今日の降水確率は50%。 大気の状態が不安…

どうして歩いているんですか?

二十四日目。 浦の内小学校の質問箱 「どうして歩いているんですか?」 難しい質問だな。痛いところを突かれたような気分。 すぐには答えられないな。 あぁ、起きてから何も飲んでいない。 水が汲めそうなところもないので困っていると おぉ、高知名物小夏み…

ジュンコウセン

二十三日目。 熟睡。 昨日頑張りすぎたのか 足裏にマメを発見。 できたら最後、まぁゆっくり歩くか。 36番青龍寺 横綱朝青龍のしこ名はこのお寺から。 近くには朝青龍の母校明徳義塾。 36番から37番に向かうにはルートが二つあって。 外海沿いを通るのと浦の…

酷暑

二十二日目。 朝5時半出発。 次の33番雪渓寺までは 渡し船に乗る。 早朝の33番雪渓寺 僕は本日、4番目の参拝者らしい。 34番種間寺 暑い。 それにしても暑い。 コンビニというコンビニ。 公衆トイレという公衆トイレ。 あらゆるところで水を汲んでは飲み 汲…

迷故三界城

二十一日目。 朝方ようやくウトウトできた程度。 まぁ、こんなもんか。 30番善楽寺 暑くてうっとおしかったので 今回、頭を丸めてきたら 「おにいちゃん、お寺の跡取り?」「高校生?」 と聞かれた。ふふ 南国市を出て高知市に入る。 31番竹林寺への登り坂。…

遍路に戻る

二十日目。 1週間ぶりのお遍路。マメは完治。 今回もまた1ヶ月後に診察があるけれど、 順調にいけば1ヵ月内に88番まで回れるはず。 四国一周40日というのが、標準らしいから。 昼過ぎに国分寺に着く。 通しで周らない場合は、最後に行ったお寺の 大師堂から…

This Is Not The End

十九日目。 夜中に雨。 完全に油断していた。フライも適当にかぶせて 窪地のようなところにテントを張ってしまっていた。 気づけばテントは浸水。 3時頃から、ひたすらタオルで拭いてはコッヘルに絞り また拭いての繰り返し。 いつも首に巻いているこれが役…

お遍路の静かに去っていく桜

十八日目。 1週間の壁を越えた。 鬱と不安のミクスチュアがどれだけ醜いかなんて 所詮、常人にはわかるわけがないのだけれど、その中での達成。 この喜びは共感してもらえるだろうか。 さて、夜ひっきりなしに響いた車の騒音に嫌気がさして、 起きるとすぐに…

一週間の壁というのがあって

十七日目。 やっぱ二人は違うぜ!ぐっすり眠れた。 体もひさしぶりに調子が良い。 朝からガンガン飛ばして歩くと 僕の熱に比例して気温もどんどん上昇する。 お、新記録 38℃、これはバリを超えた。 バリ以上に過酷なところを歩いているんだと思うと 嬉しくな…

十六日目。 朝起きると 目の前に何やらパトカーが。 え、僕? と思ったらすぐにどこか行った。 野宿て、ほんとに気をつかう。 朝メシ風景 出ようとすると雨。 思いっきり憂鬱。 今日行く予定の 27番神峯寺は高知随一の難所らしいのに。 山道を歩き出そうとし…

二帖の畳

十五日目。 朝はまたしんどかったけれど 歩きはじめると楽になった。 それにしても室戸市はでかい。 かれこれ4日目。 ゆっくり休みながら歩を進めていると 羽根というところでいつも左手にもっている 数珠をどこかで落としたことに気づいた。 iPodなんて…

今日は休養と決めて

十四日目。 ここで寝た。 海の駅とろむではイルカが飼育されている。 早朝のイルカの鳴き声。神秘的やった。 会社員のとき、水族園がクライアントだった僕。 懐かしいなぁ、なんか。 さて、昨日に引き続き 体がだるい。足が痛い。 朝飯をきっちりつくったら…

室戸岬

十三日目。 こんな気の重い朝は初めてで。 朝5時起床、もう一泊しようかと思う。 足の裏のマメが尋常ではない状態だから。 マメの下にマメがあり、その下にもまた、みたいな。 でも、せっかく雨があがっているので出発することにした。 まだあと18kmも。 ト…

修行の道場へ

十二日目。 カラスの鳴き声で起きた。 ここから室戸岬までは50km。 今日は昼から大雨らしいと、昨日聞いていて。 地図をどれだけ睨んでも、途中に泊まれそうなところは一カ所だけ。 室戸市佐喜浜町。 ここから35km先になる。 間違いなく、今までで一番長い距…

浅川で

十一日目。 23番薬王寺 薬王寺は寺名からも察しがつくけれど 本尊は薬師如来。 薬師如来が本尊、というお寺が88カ寺で一番多い。 真言ももう覚えた。 「おん ころころ せんだり まとうぎ そわか」 お寺に着くと、 まず本尊の祀ってある本堂に線香をあげて 懺…

寄り道

十日目。 祖父母の家で寝ているときに発作を起こしかけた。 もう何が原因だとかよくわからない。 疲れているのはもちろんだけれど 家でじっとしていても、それはそれでしんどい。 理由はまだ考えられない。 朝、祖父の車で昨日の駅近くまで乗せてもらい そこ…

先祖も通った道なれば

九日目。 ぐっすり眠れた。 やっぱり二人だと安心感がまるでちがう。 今日は4.5km先にある22番平等寺に行って 近くの駅から汽車に乗って北に戻り 祖父宅に泊まることにしていて。 もちろん単線。 ただいま。 祖父の家で熱烈な歓迎をうけた。 そういえば帰国…

お鶴さん

八日目。 まったく眠れなかった。 自分の傾向がだいたいわかった。 ・初日 ・一人 これだけの条件で寝られない。ふぅ。 無残な深夜の考え事を持て余しつつ。 まだ暗い4時頃から米を炊いて、 ばっちり昼飯用のおにぎりも作って出発しようとおもったけれど、 …

勝浦町

七日目。 さすが梅雨。 快晴を待っていたら、4日も滞在してしまった。 まぁいい。期限があるわけでもないし。 昼ごろ出発。 18番恩山寺 19番立江寺 立江寺をでたころ、5時すぎでそろそろ 寝床をさがさなくてはいけなかったけれど 明日の行程を考えると、次の…

野草、野花

六日目。 デジカメでやたらに撮った写真を眺めて作文していて。 6月19日という日はなにも取り立てて 話すことがないのだろうと、写真をみていると 野草、野花をみるたび、レンズを寄せていたのを思い出した。 山を下りてから、五感が研がれた気がする。 水音…

言葉がしみる

五日目。 予想に反してまったく眠れなかったのは、小屋の隣の道を 夜中ひっきりなしにトラックが走っていたから、だけではない。 考えてみたら、昨日も一昨日も私のとなりにはS君がおり、 昨晩はいなかった。 一人になってつくづく思う。 本当に夜というもの…

神の棲む山で

四日目。 焼山寺の朝、テントの中が暑くなる時間までぐっすり寝た。 とはいっても、朝6時。 駐車場からは雲海が見えた。 標高700mを実感した。 ゆっくり支度をして、あさってには和歌山に行くというS君とお別れをし、 9時に本堂に向かい読経をしていると、と…

焼けるほどに

三日目。 あぁ、少し寝過ぎた。 自転車の彼はまだぐっすり、テントの中。 8時すぎに小屋を出発。 10時頃に11番札所の藤井寺に着く。 納経所のおばあちゃんと少し話す。 僕が、食料は大量に積んであるから 遭難しても飢えることはないですよ。なんて話すと 戦…

今日もまた雨

二日目。 夜、妙な突風が時折吹きつけ、 気持ち悪くてなかなか寝付けなかったというより、一睡もできなかった。 けだるく準備をして4番札所大日寺に向かった。 5、6、7、8、9番と次から次へと札所があり、 次々に納経をしていく様はまるでスタンプラリ…

発心

遍路一日目。 ついにはじまった。 ふくらはぎが1.2倍の大きさになって、体の中のバネを感じる。 和歌山から帰って1週間。 2週間に1度の通院も、次回は1カ月後にしてもらった。 何やら抑うつ感が強くて、少し吐き気もするのだけれど、 先延ばしにしていてはせ…