復帰 - 自転車世界一周配達日誌archives

四十九日目。

3週間ぶりに遍路に戻ってきた。
昨日は着いたのが遅かったので、そこらで適当にテント張って寝た。

が、予想通り眠れなかった。
自信がついたからか、
実家に居た3週間の間、薬にはほとんど頼らない生活ができていて、
それなりに頭は整理して出てきたつもりだったけれど、こっちの世界に
戻ると全く歯が立たない。
予想通りなのに、眠れないとマイナス思考が波のように押し寄せて。

やり過ごそうとしていると予期不安が、カァーっと頭を支配しそうになったので
何日ぶりかの薬を飲んだ。
あぁ、またやり直しかと絶望する。
大げさでもなんでもなく、一生治らないかも、とまじめに考えた。
よく回復基調のときにうつ病患者が自殺するというけれど、
その気持ちがなんとなく想像できる。

早朝、香園寺でお経をあげてでてくると、
見ず知らずのおっちゃんが、唐突に話しかけてきて、
身の上も特に話していないけれど、
「人生なんてなんぼでもやり直せる」と。

遍路に戻ってきたと実感する。
突然の出会い、言葉が沁みるこの感覚。

62番、63番、64番と2kmごとにある札所を巡って、
体がだいぶなまっているな、と感じる。
前に進む力が弱くて一か所で足踏みしているような歩き方で。
次の65番三角寺は45km先で、目標にするには遠すぎて。
ぽーんと、無目的な世界に放り出されたようで激しく憂鬱。

気を紛らわそうと
札所ではない寺に行ってみたくなった。日はいくらでもあるんだから。

臨済宗保国寺
たしかこのあたりだったはずと、人に聞いて見つけた。

誰かが言っていたように、急な予定変更は心を解き放つ。
こんな意思のある庭園を初めて見た。
ゆっくりしているととにかく歩くか、という気になって
うろうろ散策していると善根宿を見つけた。

前に出会った皆は、とっくに結願しているだろうと書置きノートを見てみれば、
8/31ゴーヤマンの言葉が。近い。恐るべきスローペース。
いつ道端から「おーい」と声をかけられてもおかしくない。

かってに引用して悪いけれど、彼の残した言葉。
『前に歩くだけでそこに何かある。悪いことも、良いことも、苦しいことも、
楽しいことも、そして自分の至らなさも、全部含めて「出会える」ことの喜び』

だいぶ、この書置きに励まされ、
自分も何かを書こうとすると、何も浮かんで来ず、
だいぶ感受性が鈍っているな、と気づくと、急いでも仕方ないと
彼も泊まったこの宿にお世話になりたくなった。

本日の歩数
36500歩
トータル
1533831歩