助けられて

三十八日目。

久しぶりの都市部は
妙に居心地が悪い。

宇和島名物の闘牛も見ずに
朝のうちに市街地を抜ける。

41番龍光寺。参道の休憩所で
100回以上まわった人がお寺に納める錦札。
有難がられて、こうやってコレクションする人もいる。
僕は初心者なので白札。5回目からは青札になり
赤、銀、金とつづく。

着いた頃は真昼間。
長い階段を上ったあとの境内には日陰がなくて、
あぁ勘弁してくれよ。
行儀が悪いと思いつつも鐘堂の日陰に座っていると
吐き気がする。日陰でも暑い。

次の42番仏木寺はたった2.6キロ先なのに、
1キロがとても長く感じられる。

寺らしき建物はもう見えているのに。

どこでそんなに時間をかけたか、
3時にお寺に着いて、境内でぼーっと木を見てたら
木が揺らいでいるのか、自分が揺れているのか
生半可な感情が入り込めないような、ひどい疲労。

お坊さんに
この辺りに泊まれそうな公園ないでしょうかと聞けば
峠を越えないとないよ、と。

先に見える山、あの鉄塔のあたりが峠か。
とてもすぐには登れそうになく。
飯を食べれば気分も変わるだろうと、
門前の小屋で遅めの昼食を作っていると

とおりかかった団体遍路の先達さんが、
1000円とアイスのお接待をしてくれて、去り際に
「いろいろな人に助けられて、助けられて、進みなさい。
それでもいいから、とにかく自分の足で最後までまわってみなさい。
そうやってまわった人にしかわからないことがきっと見えるから。」
と。

すりおろしニンニクをたっぷりいれたカレーを
食べると、俄然やる気が出てきて。
峠をあっという間に越えた。

これが遍路道。チャリンチャリンいよるのは杖についた鈴。

今日の寝床のあずま小屋に着くとすぐに
日が暮れた。

8時過ぎに、峠を下ってくる人の気配がしたので振り返ると
一日ぶりのゴーヤマンがそこに。

縁を感じた。

「よかったら、水わけてもらえない？」とゴーヤ氏。
水なんかでよければどうぞ、どうぞと言いたいところだけど、
これは少し先へ歩いて汲んできた貴重な水なのさ。
もったいないな、と思いつつ、でも断ったあとで、この水で
行水するわけにもいかんし、と。
「ええよ、ええよ。」「これぐらい？もっと？」とペットボトルから
ペットボトルへ注ぐ。

こんだけ歩いても、自分の人間性てのは
こんなもんか。

本日の歩数
32366歩
トータル
1124160歩

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