発作の向こう - 自転車世界一周配達日誌archives

三十五日目。

あせも対策にはベビーパウダーがいいよ、とOさん。
どんな風に使うのか見ていたら、指でつまんで
ロージンバッグのように手にまぶし、
豪快に股や背中に擦り込む。
湿っぽい空気を忘れさせてくれる優しい香りが広がる。

いいなぁ、次にでっかい町に入ったら買おうっと。

腰が痛くて、
橋の下を出たのが10時。

宿毛市街に入り、
ベビーパウダー買おうかとドラッグストアを探していたら
唐突に。
4月19日バリ島ソカ以来のパニック発作。

あ、やばいと思うとすぐに
心臓の鼓動はどんどん強まり、
治れ治れと唱えても、鼓動は波打つように激しくなり。
自分が自分でなくなっていくような恐怖だけが感じられ。
救急車を呼ぼうかと、
うろうろと交差点で人を探していると治まりました。

呆然と、その場に立ちつくしました。
もちろん家に帰ろうかと思いました。
でも帰らなかった。

その後もまた発作がきそうな予期不安にさいなまれ、
狂気に近づこうと思えば、どこまででも近づけそうでした。

やばい、と感じるその度に、
今、この時のことだけ考えよう、今歩いていることだけ、と
足下のドブ板の一枚一枚を数えて歩きました。

ふと横をみると
お遍路さん休憩所の文字があり。
命を救われた気がしました。

藁にもすがる思いで、中にいたご主人と話をし、
パニックがどうだとか説明するのが億劫だったので
腰が痛いので休ませて欲しいと言いました。

そうすると、簡易ベッドを奥から持ってきていただけ、
その上昼食まで用意していただきました。
薬がようやく効いてきて、人目もはばからず1時間眠ると
だいぶ落ち着きました。

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ブログを懲りもせず書くのは、口さがない世間にも多少僕が希望を感じて
見返りをもとめているからでしょうか。一進一退の鬱にやけになっているから
でしょうか。　
いずれにせよ、コメント機能のない無風地帯のここに開放することで、気が楽
になることが大いにあり、過去へのこだわりが少し解けた今、やたら揮発性が
強くなった夏のことを書き残してみたくなったのです。

さて、当初、遍路の理由は基礎体力をつける為だとか、
再起のためには信仰心が欲しいからだと話しましたが、
あれは真っ赤な嘘であったと思います。

僕をお遍路へ向かわせたのは、
自転車世界一周を自分が求めているのかどうか
それを判断するに足る理由を求める気持ちに他ならず。
そんな単純なことが、この7月27日頃ようやく確かになりました。

判断するためのステップは、この秋や冬で終わるようなものではなく
賢しらに嘘をつく自分に真っ当な問いを執念深く与え続けて、
ようやく達成されるものだと思っています。
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とても暑い日でした。
真新しい道には木陰がなく、
トンネルの中で昼時を過ごしました。

一本松という愛媛に入ってすぐのところに温泉があり
まだ4時頃でしたが、温泉に入り、ロビーでぼーっとしていると
白石康次郎がテレビに出ていました。

「海は怖いと思うフィルターを通して見るから怖く見える。
　でも実際は海は海としてそこにあるだけ。」
のようなことを話していました。

今日の僕にはとてつもなくハードルの高い話でした。

本日の歩数
23566歩
トータル
1013067歩

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