寄り道 - 自転車世界一周配達日誌archives

十日目。

祖父母の家で寝ているときに発作を起こしかけた。
もう何が原因だとかよくわからない。

疲れているのはもちろんだけれど
家でじっとしていても、それはそれでしんどい。
理由はまだ考えられない。

朝、祖父の車で昨日の駅近くまで乗せてもらい
そこから歩き始めた。

今日は暑い。
しばらく歩くと海が見え、カニに注意の看板があった。

木岐という小さな港町で、妙な自転車にのったカップルに
こんにちは〜と抜かれた。
なんか楽しそうでいいなと思っていると、キャラメルコーン
片手に「お接待！」とおばちゃんに話しかけられた。

1時間ぐらい、玄関先で話した。
お互いの身の上話をしたところで、
「あなたはもっと寄り道をしたほうがええ」
と言われたのが印象に残っている。

「寄り道」というワードが、沁みた。
そういえば、ここまで遍路用の地図を片手にまじめに
歩きすぎたな、と思った。

別に道を外してもいいし、どこにいっても
帰るのがいつになっても誰が何をいうでもなく。

精一杯「寄り道」しようと思った。

波音の穏やかな海岸沿いをしばらく歩くと、
きれいな二階建ての小屋を発見した。まだ2時ぐらいだったけれど、
一日ここで「寄り道」するのもいいかな、と思って
さんざん迷った挙句、小屋を出た。
2時はいくらなんでも早い。

歩いていると、
小屋で人が二人寝ていた。自転車が傍らに停めてあった。

さっきのカップルか。かごには「未来」と筆で書いてある。
夢にあふれていいな〜と思った一方で
焦って「寄り道」しなかった自分があほくさく思えた。

しばらく歩くと
えびす洞という名所があったので
思い切って「寄り道」してみた。

一周するとけっこうな距離と登り下りがあって、
気づいたら足に久々のマメができていた。
やっぱ「寄り道」ってどうなんだろ、ってふと横を見ると
さっきのカップルの自転車が停めてある。

彼らも「寄り道」か。
このとき、帰国してからずっと、
僕を覆っていた得体の知れないものが確実に一枚剥がれた。
「心が晴れ晴れした」と当時の気持を僕は地図に書き残してある。
どうすれば良いか、なんとなくわかった。

二人と話がしてみたくて、
さがしてみたけれど、きっとちょうど僕の真反対の場所にいるらしく
まぁ、そのうち抜かれるだろうと思って先にでたけれど
それっきり遭遇することはなかった。

今晩は
バスを改造した善根宿に泊めていただくことにした。

深夜に遅れて到着した愛媛の人は、
僕が3日かけて歩いた20番からの道のりを一日で来たらしい。
驚愕、愕然、唖然
40日で実家にもどらなければならないからと話していた。

話していて、なんかもう
僕は完全に「寄り道」派のお遍路に徹することに決めた。

本日の歩数
44610歩
トータル
293898歩