浅川で - 自転車世界一周配達日誌archives

十一日目。

薬王寺は寺名からも察しがつくけれど
本尊は薬師如来。

薬師如来が本尊、というお寺が88カ寺で一番多い。
真言ももう覚えた。
「おんころころせんだりまとうぎそわか」

お寺に着くと、
まず本尊の祀ってある本堂に線香をあげて
懺悔文、開經偈、発菩提心真言、三摩耶戒真言、般若心経、
本尊真言、光明真言、大師御宝号を唱え、
同様に弘法大師を祀ってある大師堂にも本尊の真言以外を唱え、
その後、納経所でご朱印とお御影をもらう。

そのあと、たいてい境内でぼーっとする。
このぼーっとがけっこう良い。歩く力が蘇る。

この寺で徳島県の札所は終わり、
次は高知県室戸市の最御崎寺。
歩いて75km先になるので、数日がかりで歩くことになる。

気が遠くなるような距離で、ほんとに気が遠くなったのか
薬王寺を出てからのことをあまり覚えていない。

地図にはこう走り書きが残っていて。
「長い暑い」

あと、
今日はだいぶ先の宍喰というところに行く予定を変更して
浅川という手前の町で寝ることにする、という決意というか、
愚痴っぽいことが書いてある。

足のマメはどんどん大きくなって痛さを増すばかりだし、
暑くてバテバテで、道端のじいちゃんに
一日でここまでしか歩いてこれんかったかと呆れられた。
昼も食べる気力がわかず、歩いていたら確実に体が
燃料切れをおこして一歩も進めなくなった。

夕方、海岸の適当なところで
米を炊いたら一気に力がみなぎってきて
暗くなる少し前に、浅川についた。

この小さな港町で先生をしている友人がいる。
もしかしたら、と思って学校を見に行ったがすでに
扉が閉まっていた。

寝床を探して港近くを歩いていると
小学生にすれ違いざまに「こんにちは〜」と言われた。
ええ教育しとるやん、と嬉しくなった。

公衆トイレの横でテントを張って寝ることにした。
ここが彼の働く街だと思うと、不思議と安心して眠りにつけた。

本日の歩数
46815歩
トータル
340713歩