仙人登場 - 自転車世界一周配達日誌archives

二十八日目。

今までで一番の快眠を得て
またもや一週間の壁をクリアした僕は
このとき、心から気分爽快だった。

朝、トイレに向かうと
駐車場はサーファー仕様のハイエースだらけ。
そういや、今日は日曜か。
さらに海の日か。

遍路の白衣は浮きまくりだなと思っていると
さらに浮き立つ異様な男発見。

髭は首まで伸び
髪はインドのサードゥのまさにそれで
汗で色あせた作務衣をまとって
足元は雪駄で、二本杖スタイル。

後々、彼を追い抜いてきた遍路達は、みな彼のことを知っていて
あ、あの仙人ね。と。

写真を撮らせてというと
笛を構えた彼は、石川から来ていてお遍路をしているという。
一日10kmしか歩かない、らしい
雪駄だと歩かないのか歩けないのかよくわからないけれど、

「般若心経、大声で唱えてみ、めっちゃ快感やから」
「お兄さん、太鼓たたいたらいいな、その病」
「俺の主食はそば。笛ふくのに、息が乱れない食べ物っていったら
　そばなんよ。」

ぶっとんだ発言の数々に
圧倒されて朝から2時間も話し込んでしまい、
出発するときはくそ暑い昼の一歩手前。

自分以上に遅い遍路がいるとわかって、なんかショックでもあり。
とにかく
今日歩く気、完全に失せた。

言うのも飽きたけれど
今日もほんとに暑い。何℃とかもうどうでもいいぐらい暑い。
江戸時代の人みたいに木陰で何遍も休憩して
四万十川のみえる小屋に着いたのが6時。

このころ日没が7時40分ぐらいだった。
当時は正確に日没時間がわかっていたのだけれど、
書いている今は思い出せない。

手紙書いていると、
自転車で元ヤクザというおっちゃんがやってきて
ここに書けないような世間話した。
10kmしか歩いてないのにめちゃくちゃ濃い一日だった。

そんな日中があっても
夜に考えることはいつも同じ。

このときのメモ
「夜は色がなくなり、
映される自分の感情も単純になる。」

本日の歩数
19215歩
トータル
853857歩