ラッカ

夕方着いて、昨夜は8時に就寝。
寝る前に短い会話しかできなかったからか、
どうも警戒心が盛んでうまく寝付けなかった。


時折、横で寝ている親父さんが起きて
ガスストーブの火を調整してくれる。おかげで寒くない。
いい人っぽい。


朝6時、羊を連れ出す娘さんの声がテントの外でする。
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ああ寒い。
30mぐらい離れたところにあるトイレで用を足して
戻ると食事の用意ができていた。


会話もなく淡々と親父さんと食べる。
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出際にお金を渡そうとすると、
「とんでもない!」といったような顔で断られた。
僕も「しまった!」と思った。


アレッポから200km。本当はもっと東のクルド人の街
カーミシュリーに行って3月21日にあるという祭りに参加したかったけれど、
盗難やらなんやらでどうにも間に合いそうにない。
北上を続けて、トルコに行くことにする。


砂漠をいつものように淡々とこぐ。平らな道。追い風。
素朴な沿道の人たち。つらいものはなーんもない。
なにかを考えていたいけれど、なんも考えていない。
そう、もうすっかり日常。
日々いつも頭で何かを生み出していくことは面倒で難しい。


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国境まで50km。
腹が減ったのでインスタントラーメンを生でかじっていたら
(けっこうおいしい)、
農家の人がこっちに来いよと手招きしている。
ちょうど水が残り少なかったので。水をもらいにそっちに行く。


アブ・アブド氏。
3人の夫人と19人の子供がいる。
5つのテントと1軒のの日干しレンガづくりの家に住んでいる。
この子がムハンマド、こっちがアフマド、バーセル、マイヤッド、リナ、、
とても覚えられない。
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(椅子に座っているのがアブド氏)


で、結局ご飯をいただいて、泊まっていきなさい
という話になり、そして僕は次のやり取りで感動したのだけど。


服を洗わせてくれませんか、と頼むと
「それなら、まずお風呂に入ればいい!」
「汚れた服は、妻が洗うから!」と。


大きな釜でお湯を沸かし、夫人たちがセッセとバケツでお湯を運んで
即席のお風呂をキッチンの中に作ってくれる。
アブド氏は「どうだ!」と満面の笑み。
4日ぶりのシャワー、有難い。ほんと。
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袋に詰め込んだパンツや靴下やらを第二夫人に手渡す。
仏教徒っぽく両手を合わして「お願いします」を表現すると、
夫人も手を合わせて微笑んでくれる。


イスラムの国で女の人と接する機会は少なくて
会ってもよく間合いがわからなくて遠慮がちになってしまうのだけど、
この家族の女の人は快活で気さくで接しやすい。
「いい村は女が元気だと聞く」って
これは『もののけ姫』のアシタカのセリフだったと思うけれど、
ほんとに女性が明るいと居心地がいい。とても安心できる。


お風呂に入ったあとは小麦の畑を見に行く。
四男のバーセル君が先導してくれる。
ユーフラテスの水が地下を通って流れ、ポンプでくみ上げられている。
水路をつたって水を引き入れ、畑に張る。
次の日は間の畦を壊して、水を隣の畑に張る。
こうやって数日かけて
この乾燥した土地に水分を十分に吸わせる。
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豊富な水。
「飲んでも問題ないよ!」というので飲もうとするとカエルが跳ねる。
「シーニー(中国人)はカエルを食べるんだろう。ヤバーニ(日本人)は?」


夜は安田九段からいただいた「ふれあい囲碁」セットで遊ぶ。
アブ・アブド氏はとても躾に厳しい人で、こんな紙のゲームでも
僕がいないときには決して子供達に触らせない。
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さすが23人家族の家長、威厳がある。


アブド氏がいないときは年長の子供が小さい子供を叱る。
皆、とても気が利いて、僕が何を食べているかを見ていて
好きなものは大皿の僕よりの方へ、あまり手をつけないものは
自分達の方へ寄せる。


夕食に出てきたラズ(米)を食べていると、なーんか
アブド氏の厳しい視線を感じる。
「スプーンはこう使うのです、ほじくって食べるのはダメです。」
と盛られたご飯の表面をなでるようにしてスプーンですくう
行儀のいい食べ方を教えてくれる。


23人家族、食事はまず男が先に食べ、
女はその後で食べる。スプーンでほじくって食べると
後からそれを食べる人に失礼なんやろうか、それとも
表面が滑らかな方がパンでつかみ易いからなんか。
アラビア語ができたらなあ。
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自家発電でつけたテレビを見て、水タバコを吸い、9時に就寝。
僕は3番目と4番目の男の子と一緒に寝ることになった。
トイレはなく、畑に水筒を持っていってする。
あぁ月が明るい。


小さい子供が僕の小便についてくる。
シャーっとやろうとすると、後ろの見えないほうに逃げて行った。
「大じゃない、小だから問題ない。」とジェスチャーすると、
笑って戻ってきた。


食事とウンコシッコでわかる、アラブの間合い。
なんかほっとする月夜。




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