ダマスカス2

「サバーバハラタという所に行って、
近所の人に聞けば場所がわかります。」
手紙の依頼人Rueさんから、そう言われている。


ネット屋で調べても
さっぱりわからなかったので、
隣でネットしていたにいちゃんに聞いたら
Googlemapをなぞって、
こういってこう行けと教えてくれた。
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サバーバハラタは、なんだろう市街地のど真ん中、
こんなところにナオラス・ナブチ氏が校長をつとめる音楽学校が
あるんやろうか。


手紙が配達しやすいようにと、
2枚の写真が同封してあった。


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数人に音楽学校の看板の写真(1998年撮影)を見せても
さっぱりわからないようで、
黒服の怖そうな警察に聞いてみる。


あそこだ、と指差された場所はシリア中央銀行の
すぐそば。すごいところにあるなあ。



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ああ、写真と同じ看板が目の前にある。
着いたわ。


「中に入ると用務員のアブヒシャムさんが出迎えてくれます。」
写真の裏にはそう書かれている。


閉じている扉をノックすると
老人が出てくる。
「アブヒシャムさんですか?」


すると、
「アナ(私だ)」とキョトンとしている。


「私、日本人、Rueさん、友達」
「ナオラス・ナブチ、手紙、これ」
「私、自転車、日本、3年」


知っているアラビア語で話すと
アブヒシャムさんの顔がほころぶ。
ああ、やっぱ この瞬間や。
この瞬間が好きなんや。


「まあ、茶でも。」
と給湯室でお茶をごちそうになる。



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アブヒシャムさんが指を数えて何か言おうとしている。
「5、6、7、8」と。


きっと、この学校の開校時間のことを言おうとしているんだろうな。
モップの先で上にある時計の5〜8時をなぞると
また大いに喜んでくれた。


今は19時半、来るのが少し遅かった。
「私、明日、5時、ここ」と言って学校を出る。


すっかり日が暮れてライトアップされた中央銀行が目の前にある。
たった数分前まで見知らぬ町のなんでもない風景だったのに
今はなにか安らげる場所に思える。
ここで会う人もそう、初対面なのにそうではない気分で話せる。



翌日。
夕方17時にもう一度学校に行く。
アブヒシャムさんが出迎えてくれる。


アブヒシャムさんが何かを言っているけど、
今日はさっぱりわからない。
「英語、どこですか?」


で呼ばれてきたのがピアノの先生。
流暢な英語で、
「私はRue先生の教え子です。あの時私は10歳でした。
今は22歳です。」
「ナオラスナブチ氏は今日は外で用事があって帰ってきません。」
「明日なら必ず会えます。約束します。」


いいのです。
エジプトからずっとこの場所のことを思い描いていた。
1日待つなんて本当になんてことないのです。


「ナオラス氏に電話で連絡が取れました。
明日はジャーナリストを伴って会えるそうです。」
それでは、また
「私、明日、5時、ここ」


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翌々日、ちょっと早めに学校に行く。
ちょうど宿を変えたので荷物満載の自転車で。



アブヒシャムさんと今日もお茶を飲んでまったりする。
数分後に一目で他の人と違う貫禄がある人が現れる。


「私がナオラス・ナブチです。」



「ああ、あなたが。」
校長室に案内される。
娘さんも一緒。
Rueさんの2枚目の写真は集合写真、
真ん中にいる小さい女の子は10年経って
もう立派な女性になった。


封を切ってすぐ、写真に見入るナオラス氏。
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Rueさんが日本の子供に音楽を教えているとわかったとき、
「おお、彼女は日本で音楽の学校をやっているのか!」
とナオラス氏は驚き、
そう言ったあと、
まわりの人にアラビア語でなにやら本当に楽しそうに話していた。



すぐに記者さんも現れて
なにやらいろいろ聞かれる。
「どこの国がよかったですか?」
「危険な目には会いましたか?」
「なぜ自転車で旅行するのですか?」


僕の記事はシリア全土にそのうち配信されるらしい。
「Sana」というこの国営の通信社は
シリアに一社しかないらしく、
とても有名な会社なんだそう。
そして記事はもちろん、アラビア語オンリー!


記者さんが帰ったあと、
授業を見学させてくれる。
Rueさんの知り合いの先生もいるんだろうか。


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「こちらがジャズギターのクラスです。」


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「こちらがクラシックギターのクラスです。」


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「こちらがマンドリンギターのクラスです。」


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「こちらがバイオリンのクラスです。」


ああ、なんかお腹いっぱいです。
疲れたのでアブヒシャムさんの部屋(給湯室)で一休み。


きなくさい中東のイメージと程遠い風景。
ギター片手に若者が中庭に集い、男女一緒に話をしている。
日本人に興味津々で、皆が部屋をのぞきにくる。
音楽にもシリアにも縁のなかった自分が、
こんなところに居るなんて不思議や。


帰り際にナオラス氏から手紙を手渡される。
長崎のRueさん宛て。
「今度はこれを届けてください。お願いします。」


届けるのは、また、いつになるかわからないな。
でも、
未配達の、確実に差し出された自分宛ての手紙が
この世にあるって、なんかいいやないですかね、
Rueさん。


Rueさんの活動はこちら↓
http://ameblo.jp/rue-nasim/


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