コダリ
四川省からこの山間の街に嫁入りしてきた
小さな火鍋屋の女主人は話し好きで。
「ここらへんの景色はきれいですね。」と話したら、
「ここらへんなんて何もないじゃない。」
「あるのは谷だけ。ここよりも林芝や玉樹、四川の
チベット自治州の方がきれいよ。」という。
「しかし、何もないのがよかったのです。」
雲の上の生活をもう十分に満喫したなあ、と思う。
胃か腸か、どうにも調子が悪く、ザンパも油っこい中国の料理も
食べる気がしない。
火鍋屋でご飯だけを買い(一杯1元)、宿の庭でおかゆをつくる。
梅干は祖母がつくって、3年前に持たせてくれたもの。
ああ、ひさしぶりのおかゆはうまい。
食べ終えて、仕度をする。
ビザは今日を入れて残り2日あるけれど、早く「中国」を出たかった。
「チベット」ではなく「中国」を出たい。このニュアンスの違い。
標高4000mのニャラムから先は一気に下る。
30kmの直滑降。ヒマラヤを突っ切っる。
といっても中国の国道。道路だけ見ていると
きっちり勾配が計算されているようでそれほど怖くはないけれど、
なんだろう、すぐ傍はリアル奈落の底、千尋の谷。
よくこんなところに舗装道をつくったもんだ。
自転車を何度も路肩に停めて、
谷底から上の白い高峰までを眺める。
無数の白い滝。紅葉した低木。
数十mくだるごとに植生がかわっていくよう。
わー っとほえてみる。
国境の街、樟木。山にへばりつくように町がある。
標高2300m。久々の2000m台。
暖かさよりも先にジワッと腕の下に湿気を感じた。
ああ、チベットは乾燥していたんやな。
インド系の顔つきをした人を見かける。
さあ、なんだろう。もう終わりだ。
放っておくとそのまま国境まで行ってしまいそうな坂で
早く出国したいはずがなんだかもったいなくなって、
税関の手前の店で茶を飲み、
ああ、あれを買っておこう。
中国人民解放軍の非常食
これ1パックで2500カロリーもある。
(表記は10496ジュール)
中身はカロリーメイトみたいなかんじ。
国境。
イミグレで荷物検査。
日記の中まで調べられる。
「中国人ガイドはどこにいますか?」
と聞かれたけれど、
後ろから上官が
「かまわないから通せ。」と出国。
さて、ネパールとの国境は橋の上。
銃を持った武警の物々しい警備の中国側と比べて、
ネパール側はこちらから見てものどかな雰囲気。
(橋の左側がネパール、右側中国)
ゆっくりとタイル張りのボーダーをまたぐ。
自分だけがわかるぐらいのガッツポーズ。
あああ。自由だ。
ネパールの入国手続きを済ませると
何もする気がおきなくなって
道路沿いでタバコをずっと吸った。
なーんもやる気がしない。
物乞いの子供達とチョコレートを食べたあと、
さて行くかと川沿いを下る。
中国とは打ってかわって未舗装のでこぼこ道。
うっそうと茂る緑の木々。
湿気のせいか
太陽、洗濯、土、壁、家族、香辛料の香り。
通り過ぎるもの一つ一つに濃い匂いがある。、
生き物の世界に戻ってきた。
そういやチベットは寒くてにおいがなかったなあと
思うが早いか真っ先に思い出したのは
五体投地の巡礼者のテントに招かれたあの夜のこと。
http://d.hatena.ne.jp/sekaiisshu/20101008
料理のにおい、人の体臭、ヤクのにおい。
濃い匂いがあったやないか。
なんや夢だったみたいや。
動画がでてきたので添えてみる。
にほんブログ村←最近、日記の評判がよいみたいなので
試しにどこまでランキングが上がるか久々設置してみる。