シガツェ
朝は予定通りザンパ。
ああ、そんなにたくさんは要らないよ。
すこーしでいいから、すこーしで。ああ。
で、こねるのが下手くそな僕のかわりに
絵画職人がこねてくれる。
手きれい?
さらに、今までになかった「砂糖」を加えてくれる。
すると、あら不思議。
今まで味気なかった小麦粉の塊のおいしいこと、
おいしいこと。
バター茶ともよく合う。
でも、やっぱり7握りぐらいが限度。
職「ザンパを朝にたくさん食べれば風邪を引かない!」
職「下痢にはなる!」
ああ、納得。消化悪そうだもんなあ。
どうも、この食べ物ってのは
無理してたくさん食べないといけないものらしい。
チベット第二の都市シガツェまでは舗装されていない
ダート道だった。時速10kmしかでない砂埃地獄70km。
なんで主要幹線を一度に70kmも工事するんだろう。
馬鹿やないかと恨めしい。
体力が落ちている。
一時期より1,000m以上標高がさがって、
ほんとはグイグイ進めるはずがちっとも進まない。
もう2週間以上連続でこいでいる。
そのうち、どうにかなりそう。
この日は砂埃をさけるために
道から離れた畑のあぜ道で寝ることにした。
周囲数キロに人の気配はまったくない。
テントを張るのもしんどいぐらいに疲れ果てたので、
グランドシートを引き、マットを敷いただけ
星空を見ながら寝ることにした。
夜の冷え込みがきつくない標高3500mぐらいだからできる業。
僕も大胆になってきたもんだ。
うすい雲が、僕の体の下のほう、空を半分だけ覆って
まるで雲のフトンをかぶっているみたい。
そのまま日中の疲れで寝てしまったのだけれど。
夜中、
なにかの気配を感じて
ぱっと目が覚めた。
しばらく様子をうかがって
もう一度、その誰かが動くのを待っていると
なにかを食べている音、大きな鼻息が聞こえた。
ライトでその方向を照らすと、青い目が4つ光った。
グランドピアノみたいなヤクが数頭いた。
なんだヤクか。
空を見ると
さっきのフトンの空が勢力を広げて空一面に広がっている。
この気温じゃ雪にはならない。
雨がこなけりゃいいけどなあ。
で、ポツポツ降ってきた。
テントを張るほどの雨でもなかったので
フライシートをかぶって寝た。