勐腊2

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中国。顔が似ている奴らが
こんなに無礼で無作法であることが許せないと
東北地方を移動していた僕は綴っていたけれど


南へ南へ来るうちに、慣れて許せて
あと二日で出国、今は名残惜しい。
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北朝鮮国境にほど近い鳳城という街で
訪ねた宿がすべて外国人宿泊拒否だった。
そのとき、中国語を全く話せない僕とともに
何件も宿をまわってくれたのが、呂巍巍という同い年の女の子で。
[いいよ、どこかでテントを張るから]と彼女を見送って
商店で野宿用の食糧と水を買って外に出ると、
彼女が待っていて[私の家に泊まりなさい]といい、
[ほんとにいいの?]というと彼女はしょうがないじゃないと
いう顔をして、家に電話すると携帯電話の向こうから
彼女のお母さんが怒っていて、巍巍も顔を真っ赤にして怒っていて
[Very sorry]と言った彼女の発音と顔が忘れられない。
中国滞在三日目でどうにも心細く、巍巍と別れてから
山道を漕いでいるのかなんなのか、とろとろ進んでいると
日が暮れはじめて高速道路の橋桁の脇や草むら、野宿なのかなあ今日はと
道の脇に人を見つけて、子供を連れたそのおばさんに
[招待所?]と紙切れを見せると子供を後ろにサッとかくまって
怪訝な顔をするので[私は日本人です]というと、
[リーベン!]と大きな声をあげたので、ああきっと反日感情
ある人なんだと、もうあきらめてこぎ出そうとすると
遠くの娘さんをおばさんが呼んで。近づいてきた娘さんは
日本に帰化していて、今は里帰り中とのことで日本語が流暢だった。
日本名を仲村さんというその人は僕を家に泊めてくれて
夜中ひととおりの中国語レッスンを施してくれて


[中国の人は声が大きくて高いし、
言いたいことを我慢しないで言うんだけど、
そういう気質が私は好きなんですよ]
と言った。


この人達を好きになれるものなんやと
そう考えることもできるんだと、そう思ってみればそう思えたらしく
名残惜しいけれど、僕はとても満足してこの国を
通り過ぎることができるみたい。


お礼かなんだかわからないけれど、
電話を今からかけてみょうと思うんだな、中国語で。
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