高野山へ(その3)

4日目。朝5時起床。
早朝の空気は肌寒く、一晩を野宿できた達成感があり、
妙にすがすがしい。


夜中、数度目が覚めたが、
またすぐ寝ることができた。


公園の高台に登り、
実家から持ってきていた米を炊いた。
初の米炊き。確か、3合炊きの炊飯器はお急ぎモードで20分ぐらいだったよな、
火加減は「はじめちょろちょろ、なかぱっぱ」と家庭科で習ったな、と炊いてみると
何やら焦げ臭い。開けてみると、ところどころに茶色くなっており、
下の方が焦げていた。ぱっぱしすぎた。
見事に失敗だけれど、この充実感はなんだろう。
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歩き始めて数時間経っても堺市を抜け出せない。
しんどいな〜と思っていると、そばを歩いていたおじいちゃんに声をかけられた。
「わしも高野街道を辿ったことがあってな」と。
「この道を行きなさい」と、道順を教えてくれて、大阪狭山市に入るまで一緒に歩いてくれた。
今回初めての人とのふれあい。
大阪の町で、杖の鈴をならして歩く遍路姿は異様に映るだろう。
話しかけてくれたことがありがたかった。


河内長野市に入る辺りから、道に勾配がでてくる。
なだらかな上り坂を進んでいると、原付に乗ったお兄さんが声をかけてくる。
「僕、高野山の近くに住んでいるんですけど、空海が好きなんです。
 お遍路さんに大阪で会えるなんて感激です。なにかお接待させてください」
と、高野山のパンフレットを渡してくれた。
「お接待」というのは、巡拝をしている遍路に食べ物とか、お金をお布施する
慣習で、その人の功徳になるといわれていて。遍路はお接待を断ってはいけない
ことになっていて、遍路はお返しに、名前と住所を書いた納め札を渡すことに
なっている。
それにしても、思いがけない場所での唐突な初「お接待」だった。


朝からずっと歩き続けて、足が痛い。
南海高野線千代田駅で1時間ほどボーっとする。
朝作っておいた、おにぎりを食べて、これから続く峠越えの登り坂へ
気を引き締める。


三日市というところをすぎると、
人気のない2車線、時折1車線の国道をひたすら進む。
堺で買いすぎた食料が、体の節々に負担をかけているのがわかる。
1時間に一度、15分程度の休憩をとりながら少しずつ、峠を目指す。


このころ、歩いていて妙に悔しかった。
僕はこうやって、孤独な一晩を乗り越え、立派に重荷を背負って
歩いていけているではないか。
帰ってきてしまった。あぁ、帰ってきてしまったと、
いくらこの国でどんな目に遭おうとも帰ってきてしまったのだと。


天見というところ。
ほんとに、よくぞ家を建てましたね、という急流沿いに家があったり
なかったり。バスに追い抜かれる時にビクビクすれば、
「同行二人」の文字を見て歩く。


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紀見峠。初のトンネルは1400mを超える。
今の僕にとってトンネルほど怖いものはない。歩道があったのでよかったけれど、
もうそろそろ、真ん中かな〜と思って脇の掲示をみると、あと900mとか。
後ろを振り返ると気が遠くなるので見ないようにして、
足早に遙か向こうの出口を目指す。「同行二人」と唱えながら。


トンネルを抜けると、壁に沿うように歩いたせいで手が真っ黒になっていた。
時刻は6時。あと1時間ちょっとで日が暮れる。早く今日の寝床を見つけなければ。


暫く歩くと、ローソンがあり
地図を見ると、少し先の団地内に大きな公園がある。
そこで寝ようと決めた。
が、もう10時間ほど歩き続けた体は重く、日はだんだんと暮れていき、
その辺りかと思える場所に着いた頃には、景色はもう夜そのものだった。
目当ての公園を捜すが、地図もなく斜面になっている団地内を
いったりきたりしているうちに、自分がどこにいるかもわからなくなってしまった。


たまたま近くを通った、塾帰りらしい中学生に公園の場所を尋ねると
思いっきり不審者がられて困惑したけれど、
その子の言うとおりに進むと、何やら一面のお墓。
不審者とお墓、お似合いだけれど冗談じゃない。
ここを通るのは勘弁と思い、途中で見かけた小さな公園で寝ることにした。


数時間ぶりに腰をおろし、テントを張る場所を捜すが、
良くできた公園で死角のシの字もない。もういいやと、倉庫裏の
スペースにテントを張り、そそくさと夜食をかき込んだ。
寝ようとしたが、犬の散歩でひっきりなしに人が訪れ
なかなかテントに潜り込めない。


疲れ果てた体をベンチに預けて後ろを振り返ると、
高台の公園からは明日通る予定の橋本市内の夜景が一望できた。
明日は高野山の麓までいこう。




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