高野山へ(その1)

近畿地方は例年よりだいぶ早く梅雨入りしたらしい。
ついていない。
小雨がやんだころを見計らって、
JR京都駅の地下から出て、東寺を目指す。


駅前の外国人観光客。京都独特の光景。
様々な言葉で書かれた看板を目にすると、なにか嬉しい。
その心の理由は深く問わなくても、なんとなくわかる。
帰国後未だ3週間、外国というものに未練たらたらの自分。
素直でよろしい。


東寺にある真言密教の世界を現した立体曼荼羅。
圧巻だったけれど、未だ信仰心の乏しい私には
「でかいものはすごい」程度の感動しかなかった、と
当時の気持ちを妙に律儀に解いてみている。


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鬱が全く治る気配も見せないまま、京都の東寺とかいうお寺に来て
訳のわからない曼荼羅なるものをみているのは、
少しリッチな気晴らし、癒しを求めて、というわけではない。


関西に帰国後会っておかねばならない人がいた、
というのが京都に来た理由の一つなのだけれど、
この寺に来た理由は?と聞かれれば、
この夏、空海の足跡を辿る四国八十八カ所巡りをするから、と答える。
多くの人は四国を巡った後に、お礼参りと称して高野山や東寺に
向かうというが、後でいきなり来られてお礼だけされてもお大師さんは困るはず、
まずは真言宗の聖地、京都の東寺、和歌山の高野山へ行き、
事前のご挨拶をするのが筋だろうと、これまた妙に律儀に思ったわけで。
僕は今後、徳島県にある一番札所から香川県の八十八番札所まで
すべてを徒歩で巡る、歩き遍路という形をとることにしている。


徳島県で生まれ育ったものだから、
「お遍路」という言葉にはなじみがあるが、
小、中、高の通学路のどれもが「お遍路さん」が通る遍路道ではなかったので
「お遍路」なるものの実物を目にしたことはあまりない。
それがどのようなものであるのかは旅行から帰ってきて詳しく知った。


そのような若干得体の知れないことに、
数ヶ月を割いて没頭してみようと考えた最たる理由は、
帰国後早々に行った心療内科で、
パニック発作は基礎体力以上の動きを体が察知した、危険信号なんよ」
と言われたことにある。
発作が起きないようにするなら、
基礎体力をつけるしか戻る術はないではないかと当然考えた。
自転車はバリに置いてきたし、薬のせいで若干の眠気やふらつきがあるので
スピードのでる乗り物は毎日乗る気にはなれない。
基礎体力をつけるには「歩き」かな、と思った。
医者も、「お遍路をしようと思います」というと、それは自信になるかも
しれないからいいね、と言ってくれた。


5月末頃、仏陀の四門出遊のごとく、実家から東西南北に適当に
目的地を決めて歩いていたのは、これを意識してのこと。
数日歩いてみて、「歩き」は思いの外、自分の性に合っていたことに気づいた。
なんでこんなに遅いかな、と思って歩いていると、
いつのまにか遠くまで来ているものだし、
歩き疲れれば、したくはない考え事もせずに済んだ。


単なる「歩き」ではなく、お遍路という形をとる理由。
妙にポジティブな言い方をすれば、
せっかく、ここまで落ち込んでいるのだから、この際何かを強烈に信じてみる
という経験をしたくなった。祈りが、どれほど人を救えるものなのか
この身で感じ、考えてみたかった。
ここまで考えられるようになったので、
自分に若干の余裕はでてきていることもわかる。
そして、できれば自分の信仰心の強さみたいなものも再起のためには身につけたい。
そう思った。


兄に借りた70Lザックの中身は、自転車世界一周の荷物から抜粋したものばかり。
食事はオール自炊、そしてオール野宿。こう決めて荷物を精査すると総重量は17kg。
これに食料や水を買い足すと、20kgは余裕で超えるだろう。


これを背負い、四国を巡る予行演習として、徒歩で高野山に行ってみよう。
今日からのことはしばらくブログにも書かないし、ごく親しい人にしか言わない。
自分を楽にするために、誰が私を見ていようか。とつぶやいた途端に、
あぁ、一番融通が利かない自分が見て居るではないか、と考え嫌になる。
でも心が折れそうになったら、公共交通機関を使おう。
それでもいい、と何度も自分に言い聞かせた。
しなやかに、柔軟に。
そんな自分も久々に開放して、自由に飛び跳ねさせてやりたい気がする。


徳島の第1番札所霊山寺で事前に購入しておいた菅笠や金剛杖には
「南無大師遍照金剛  同行二人」と印字されてある。
「同行二人」の意味を知って、あぁもっと早く知っていたかったと思った。


どこにいても、弘法大師と一緒。絶海の孤島にいても、
大蛇の潜む山地にいても、決して一人ではないということ。


背負ってしまった一人の恐怖を克服したい自分にとって、
本当にこれほど勇気づけられる言葉はない。
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