トルカナ湖4


クリスマスイブのその日も
僕はサバンナ地帯の砂場を自転車押していて。


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(木の枝でつくったトルカナ族の住居)


人通りが多くなり、トルカナ族の集落に商店もちらほらあり、
ずいぶんと補給は楽になって
思う存分、水も温かいジュースも飲めるのだけど、
いい加減、この砂の道にイライラしてきた。


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(トルカナ湖の魚、2匹で50シリング=50円)
こげないので、押しているとペダルが足に当たって
擦り傷をつくるばかりで、
そんならペダルをはずしてもいいやん、とか思いつつ、
あ〜暑い、イライラ。


これでエチオピアみたいに子供がうっとおしかったら、
AK-47でぶっとばしていたところだけど、
ケニアの子供というか、ここらの子供は
アジア人を見て「目の細いのがこっちを見ている
のか見ていないのか、なんか怖いよ。」
と物陰からこっちをじっと見ていて、
決して「マニー」とか「ユー」とか「ウェアユーゴー」とか
言わないので、とても可愛らしい。


ここらは本当に貧しい。
もともとそういう民族、体格なのかわからないけれども、
出会う人は皆痩せていて、片手に黄色いポリタンクを持って
どこにいくかと言えば、何10kmも離れた井戸に行くのである。


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僕よりも速く炎天下を黙々と歩き、そして井戸帰りの彼らと僕は
またすれ違い、何もない道を戻っていく。
水を汲む、それだけで半日仕事だ。


毎日、水を汲む生活。人生。一生。
僕は荒野だ砂漠だと浮かれているけれど、荒れていても
ここはここに育ったものにとっての生きる場所。


トルカナ湖は内陸にあるのに、塩湖で直接は水を飲めない。
そして、このあたりは1年に数日だけ雨が降る、
そんな乾ききった土地である。場所によっては、
ついこの前3年ぶりの雨が降ったそうで。


何本もの枯れた川を越えてきたけれど、
ひっくり返った大木や大量の絡まった家の残骸をみると、
その数日だけ降る雨が乾いた土に吸収される間もなく、
激流となって道や家を洗い流してしまったことがわかる。


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さて、その日僕はもう早くこの砂場を抜け出したくて、
あと2日で終わらすために、黙々と押していた。
目標の村まであとどのくらいか、すれ違う人に聞くと
皆が「near(近く)」という。


ところが、歩いても歩いても一向に村はニアーじゃねーか、
どんな距離感覚してんねん、とイラつきながら、
しかし僕は徒歩より遅いのであるから仕方ない。
汗と砂でボロ雑巾になり、ついに日が暮れた。
空に月はなく、まったくの闇夜である。


そして、僕はライトをつけるのが少し怖かった。
こんな辺境で高性能に白く輝くLEDライトなんて、
外国人がここにいますよと言っているようなものと
思ったから。


サクサクと砂を踏む感触を頼りに歩くと、大きなひらけた
河原があり、そこは妙に青白く明るくて気味悪く
うしろを振り返ったり、立ち止まってみたり、
それを越えるとまた真っ暗な道になった。


視界がきかないと、
嗅覚や聴覚が敏感になるらしい。
そう、特に嗅覚だ。


空気の中に汗と干し肉と土が混じったような独特の匂いがする。
その方向からは、なにかボソボソと話し声がして、
暗くてまったく見えないのだけれど、
「ハロー」というと、暗がりからも「ハロー」と言った。
ようやくライトをつけてみると、休憩中の行商人達で
他愛もない世間話をしたらホッとした。
「ここらへんは夜危ないですか?」
「ノープロブレム」


(でも本当に聞きたいことは、
「あなた方は危ない人ではないですよね?」)


そこから先は村だった。
肉の焼けるにおい、トマトを煮込んだにおいがし、
あれ、けっこういいもの食ってるやん、と思うが
ああ今日はクリスマスイブやから特別なのかもな。


あの鳥の巣をひっくり返したような家が
いくつかあり、その中で赤い火が小さく燃えている。
女の人の顔が映え、何人かの子供の無邪気な影がうごく。


大きな村だった。
商店はもう店じまい。
水も何も買えない。
と、後ろの方からの車の強い光が
僕を追い越したところで止まる。


「私の後に着いてきなさい。」と車の窓から言った人は、
今日途中の村で会った、ウガンダ人の神父さんであった。
ああ暗くなると運命に偶然に奇跡に従順になるのだ。


神父さんの家に着くと、
「今夜は村でクリスマスのお祭りがあるから、
疲れていないのなら参加したらどう?」
と言われたけど、
もう一刻も早く横になりたかった。


ポリタンクを濡れた麻の袋にいれて
気化熱で冷やした井戸水は、
ほのかの冷たくておいしく、
バケツに水をくんで行水すると、最高だった。


敷地にテントを張らせてもらって、横になる。
太鼓と歌声が聞こえる中、あっという間に眠たくなる。
[:movie]

夜中、目が覚めた。
お手伝いの女の子が祭りから戻ってきたらしく
上機嫌で鼻歌を歌いながら部屋に入っていった。



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(翌日、神父のファーザー・ジョージ、お手伝いの女の子と)


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