トルカナ湖
ケニア、エチオピア、スーダンの国境がある
この辺りにはダサネチ族が住んでいて、
男は銃で武装している。
こわいが、手を振ると手を振り返してくれる。
彼ら、この8月にケニアに越境して以前から家畜の草地をめぐって
緊張状態にあった南のトルカナ族を100名殺害した。
オモ川エリアではコンソ、ハメル族も銃をかかえているが、
あれは弾は実際には入っていないので飾り
みたいなもんだけど、こっちは本気である。
エチオピアのチェックポストを越えたあとは
まったくの荒れ地をすすむ。
スーダンから流れてきた川が氾濫して
たよりの轍を水没させてしまっているので、
大回りしてコンパス頼りに南に向かう。
ダサネチ族の牧童がちらほら視界にあり、
なんや全然無人地帯じゃないやんと思っていたら、
ステップからだんだんと砂漠になり、
もうサイクリングというより自転車をおしたり
引っ張ったり、ヒキズリングする
途方もないことをしていたら、
まわりにいつの間にか誰もいなくなった。
運よく轍らしきものをみつけ、
それに沿ってすすんでいると、だんだんと
とんでもない方向にいくことになり、
道に迷ってしまった。
南に進路をとればいいのだけど、
だって、そっちは何もない砂漠なのだ。
怖くて進めなかった。
どれくらいひきずったか、もう洒落にならないから
ただ進むことだけに集中して写真も何もないけれど、
遠くに集落らしきものがみえて、
轍はそこにつづいているわけだった。
近くまで歩いていくと、
女性がなにやら怪訝そうな視線を
僕に投げかけて砂漠の方へ歩いていく。
[え、そっちはなにもないのに。]
と思った途端、彼女は砂の上にしゃがんで用をたしだした。
集落から男と子供が出てきて、
こんな水も緑もないところでどうやって暮らしてるんだろうか。
アムハラ語で[車、道、どこ?]
と聞いたら、こっちこっちと手招きする。
ついていく。
もう暑くて
体は疲れ果てているのに、
すぐそこに人がいると安心して
まだまだ自転車を押せた。
不思議な感覚だった。
案内してくれた場所には
頼りがいのある轍がカッチリあった。
助かった。
彼らにお礼の100シリング札をわたして
先に進み、ぽつんと一本だけ生えている低木の
下に潜り込んだ。
そこは驚くほど涼しくて、そうすると
ようやく自分の体が芯まで熱を持っていることがわかった。
この長い話の間に進んだのはたった8kmやった。
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