ボローニャ

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イタリアは長靴の形、なんてベタなことを言うのは、
イタリア人に出身地を聞いたら、
片脚を中に浮かして、これがイタリアの形でここがナポリで俺はここ出身、
と指差したのが、やっぱ面白かったので。



じゃあ、ボローニャはどこになるかというと、
脚をもってしても説明し辛い場所にある。
すねの辺りから、内陸に入り、
イタリアを縦に支える標高1000mのアペニン山脈を
越えたところにあるのがボローニャ
有名なフィレンツェの100km北東にある。


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この旅行の手紙配達アイデアは、元はといえば、
今回の配達の依頼人のミヤコさん(大学時代の同じ部活の友人)が、
「イタリアに行くなら、手紙をマウロに届けてよ。」と言ったのがきっかけ。


自転車で時間をかけてお届けか、悪くないなあ。
他にも募ってみるか、とWebと母校の外大に張り紙をしたら、
思いのほか集まって、45通。


数えてみると、いつのまにか、そのうち23通は配達できた。
4通はこの3年のうちに受取人が帰国してしまった。
そして、24通目になるこの手紙。


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「彼の家はボローニャ市街地から少し離れた丘の上にあります。
街灯がないので、極力、日のあるうちに行ってね。」
と依頼状にあり、
まぁ、丘といっても市内、知れてるやろうと
タカをくくっていったのが間違い。
登ったり下ったり、ホントにこんなところに家があるんやろうかという
山の中に入っていく。


ヨーロッパ最後の手紙配達は、確実に相手に会いたいものだと思って、
事前にミヤコさんを通じてマウロ氏に連絡していたものの、
予定の時刻はどんどん迫ってくる。
あぁ、予定立てるの嫌い。


で、その宛先らしき住所にようやくたどり着くと、
こんな山奥にまさかのオートロック門。ほんとこいつは天敵だ。
連絡先を知らない限り、中に入りようがないから。
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と、そのときに中から車が出てきたので
その開いた隙に住宅地の中に入る。


で、いくつかある家からマウロ氏の家を探し出さないといけないのだけど、
彼の名前は集合郵便受けに見当たらない。
で、あてずっぽうに家のベルを押して、近所の人に聞いてみたけれど、
彼女はイタリア語しか話せないらしく、まったく何のことやらわからない。
あれ、もしや会えないのか、これ。


で、ウロウロしていると
ブーンとバイクに乗ったイタリア人男性が僕を追ってきて
「ミヤーコの友達?マウロです。」
という。
ミヤコではなく、ミヤーコである。イタリアである。


あぁあ。
このときは、いつもとは反対に
僕が破顔一笑だったに違いない。


「家の窓から自転車に乗った君が見えてね。」
「しかも、メールを久々にチェックしたのが1時間前で、
君が来ることを僕はさっき知ったんだよ。幸運だねえ。」と。



「今日と明日、泊まっていきなさい。疲れもたまっているだろうし。」
あぁ、ありがたい(まぁ、そのつもりだったんやけど¥)
手紙を預かっていることは知らされていなかったようで、
それはそれは感激してくれた。


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で、お楽しみの開封タイム。
「ミヤーコとは11年前に港町のユースホステルで会ってね、こんな街に
なんで日本人が、と思って話しかけたのがきっかけでね。」



マウロはフリーカメラマンで、奥さんとは離婚して
この家に娘のアリアンナと二人で暮らしている。
が、22歳。お年頃のアリアンナは彼氏の家や別れた奥さんの家に
泊まったりで、数日はここにいないらしい。


家は元ヒッピーだったというマウロの好きなものが
あちこちに飾られていて、見ていて飽きない。
日本に行ったときの記念は「富士山の写真のテレフォンカード」。


「今晩はアリアンナの部屋に寝てね。」
「あの部屋は昔、ミヤーコも泊まったんだよ。」


ミヤコさんが、2000年マウロと知り合ってこの家を訪ねたとき、
アリアンナは10歳である。
カメラマンのマウロは、毎年、娘の写真を撮り、
それを彼女の部屋の壁に飾ってある。


妊婦の奥さんの写真も含めて2000年に
11枚の写真しかなかったのが、今は23枚ある。

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(2000年当時のアリアンナ)
ミヤコさんはこの少女アリアンナしか知らない。
明日、マウロがアリアンナに会わせてくれるという。
なんてたって、手紙はマウロ&アリアンナ宛て。


23人のアリアンナに囲まれて、10日ぶりのベッド。
「配達した手紙の数と同じだね。」とマウロ。
ははは、なんかいい夢見られそうや。
あぁ、届いたなあ。
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すっかり熟睡して、夢は見なかった。と思う。
次の日、市街地にあるマウロの実家に行き、
マウロのお母さんとアリアンナに会う。


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(アリアンナとお母さん)

たっぷりのイタリア料理をごちそうになる。
お母さんは「トゥット、トゥット」という。
「全部食べなさい。」ということらしい。


いえ、ちょっと、さすがにパスタ2皿のあとの
メイン料理はきついです。
はい、明日のお弁当に。
あ、でもこれがイタリア料理では普通なんやな。
第一の皿、第二の皿、デザート、果物。



マウロからは出発の朝、
これをミヤコに、と手紙を預かった。
「封筒がないからね、自分で作ったよ。」と、芸術家らしいカッコいい手紙。
マ「3年先に届いても、10年先に届いてもかまわないことが書いてある。」

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またこれも届けよう。


後日、ミヤコさんいわく
「過去の自分と手紙、知らない者同士だった旧友とイタリアの友人、
バラバラの時間と国境と人間関係を一気に結んだ自転車(&こいだ人)
に感動しました。」


君の依頼で思いついたこの自転車配達旅行。
大したことではなく、ただ目的地を決めてくれる手紙
と思い込んでいるのだけど。


無理やり感動するのはよして、配達して何がよかったのか考えると、
一つ確かなことは、手紙届けて、その人に会うと、
日本でいた自分が知らないはずの場所で流れていた時間、
そこで起こった経験を、
なぜか僕も共有できるということ。
ただ「直接会う」ということだけなのに。


届け先の人と依頼した人との出会い、共に過ごした日々、
自分も一緒にそこにいたかのように思えるんよなぁ。


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まるで、一緒に部活にうち込んだように、


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まるでインドネシアで一緒に暮らしていたように、


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ネパールの月の下で話をしたように、


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シリアで歌を歌ったように、


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トルコでホームステイしたように、


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和歌山で中学時代を一緒にすごしたかのように、


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中国で同じ部屋をシェアしたかのように。



ひとまず、これで手紙配達はおしまい。
自転車旅行は続けるけども。


最後に22歳になった大人のアリアンナと、お母さんから
ビデオレター



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