フェンロー

偶然は楽しい。
だから、へんな話だけれど
偶然が起こりうるように、そういうシチュエーションを準備する。


最近読んだ、ある指揮者のブログで
同じようなことを彼だか彼女だかも言っていて、
「音楽の楽しさは、音と音が偶然に出会うことにある。
指揮は、そのコンマ数秒手前の、その偶然への下準備なのです。」と。


マイナーな道を、急がずに、人に頼って進む。
そうすると決まって、全く予想もしなかったことが起こる。


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アヤコさんから預かった手紙は、
高校時代にクラスメイトだったオランダ人留学生レネエさんあてのもの。
二人は八年前にあったきりで、当時レネエさんが書き残した住所を
そのまま写したという封筒のあて先はネットで探しても見つからず、
困ってユトレヒトのオランダ人の友人に相談して、ようやく見つかった。
なぜか余計なアルファベットが住所に入っていた、だけのことだった。


見つかった住所は、通ってきた道を200kmほど戻らなければならず、
それは嫌なので、大回りして別の道で向かうことにした。


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河をわたった向こうに届け先の町がある。
今日は日曜日、渡し舟がやっているかどうか不安だったけれど、
やっていた。
うむ、今日はツイているかもしれない。
(西欧の商店は日曜日にはきれいに閉店してしまって、
水一本買うのにも一苦労する。かっちりしすぎなんや。)


ドイツ国境まであと3km、オランダの縁にあるステイルというその町は
本当に小さな町で、中心にレストランとカフェが一軒ずつあるだけ。
始めて来るのに、なんだかなつかしいかんじ。


pacelliaan通りというところに家はある。
この通り、親切なオランダ人は聞けばすぐに教えてくれるだろうけど
なんだろうな、運試しにテキトウに探し回ってみた。
まぁ、こういう時間が好きなんだけど。


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そうすると、ものの5分でその通りは見つかり、
やっぱ今日はツイているなぁ、と確信する。


家の前に着く。
まずは、タバコを一服。
そして、ベルを鳴らす。


誰も出ない。
でも二階の窓は開けっ放しだから、
きっとそのうち家人は戻ってくるんだろう。




でも、しばらく待っても誰も帰ってこない。


たまたま外にいた隣の家の人に聞いてみると、
「彼らはいつでも窓を開けっぱなしだからね。」と。


向こう隣の人が親しいから、とその人は
その家のベルを押し、
中から出てきた女の人は、僕に何も聞かずに
「じゃあ、レネエの携帯に電話してあげる。」と。
なんて親切な。


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(ご近所さんたち)


「レネエは日本語が話せるのよ。」
へぇ、それは知らなかった。
というか、アヤコさんを直接僕は知らないので
レネエさんの情報もほとんど持ってないのです。


「もしもし」
「わぁ、アヤコの友達?会いたいけど、今私は
レイデン市の大学の寮に住んでいて、そこから300km、
電車で2時間ぐらいかかるから、会えないと思います。」
あぁ。


「とても残念、でもありがとう。そこは私の実家で、
今日は両親も帰ってこないはずだから、
手紙をポストに投函しておいてください。」
たぶんいい人なんだろうな、と。会えないのが余計に惜しい。


わかりました、といいつつも
本人に届けられなかったのはショックで。


「レイデンまで2日あれば自転車でいけるんじゃない?」
冗談でそう言ったお隣さん。


あぁ、それもありだな。と一瞬思ったけれど、
いやいや、レイデンてユトレヒト方面やん。
またあっちに戻るのはなぁ。


結局決心がつかず、でも日が暮れてきたので
とりあえず夜に手紙をどうするかを考えることにして
教えてもらった近場のキャンプサイトに急ぐ。


キャンプサイトはくそ高く、なんと一泊25ユーロ。
あほくさくて、結局近くの森でひっそりこっそり寝る。


翌朝、決心した。
やっぱ、そこまでやることはないな、と。
ストーリーとしてはおもしろいけれど、
きっと喜んでくれるだろうけど、いややっぱ
そういうネタ作りのために旅行することはないやろう、と。
手紙はポストに投函して、次の配達先のドイツに向かうことにした。


近くのカフェで、凍えながら僕からの手紙を書き、
その封筒の中にアヤコさんの手紙を同封する。
8月というのにオランダの早朝は10℃ぐらいまで気温が下がる。
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家の前に着き、
いちおうベルをもう一度鳴らしてみる。
やっぱ誰も出ない。
郵便受けに手紙を投函する。


でも、
あれ?
昨日は窓が開いていたのに
今は閉まっている。


と、その窓が突然開いて、
「ジャストモーメント!」とおばさんが僕を呼び止める。
待つこと数秒、


物音一つしなかった
その家のドアがガタッと開き、
きれいなお嬢さんが
「中に入ってください。」
と流暢な日本語で言う。


何のことやら状況が飲み込めなかった。
その人は
「私、レネエです。」
「昨日電話をもらってから、少し考えて
やっぱり戻ってくることにしたんです。」
いつ?
「昨日の深夜に。」


あぁ、

こんなことってあるんや。


彼女は部活の練習のために、昼の便でまたレイデンに帰るという。
まさに僕に会うためだけに戻って来てくれたみたい。
「キャンプ場に泊まっていると聞いたから、
もうすぐ電話して会いに行こうと思っていました。」


いんや、キャンプ場には泊まっていなくて。
そう、もしかしたら入れ違いになっていたかもしれない。
今来てよかった。


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レネエさんとそのご両親。
「Postman always rings twise.(郵便配達人は二度ベルを鳴らす。)」
と、お父さんが洒落をきかせて古い映画の名前を言った。


とりあえず、朝ごはんを一緒にいただいた。
皆、とても興奮していて会話がはずみ、食事にならなかった。
そして、


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手紙を読むレネエさん。
「あ、成人式!」と同封されていた成人式の写真を見て喜ぶ。
「皆、全然顔が違う。でも、誰かはすぐにわかった。」



「アヤコとか仲のいい日本人の女の子が四人いて、
そのうちの一人とは今も連絡をとっているけど、
アヤコは何回か引っ越したらしくて連絡がとれなかった。
だから、とても嬉しい。」



「ほら」と当時の交換日記と、教室で撮った写真。
まぁ、たった今僕は初めてアヤコさんを見たわけですが。
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そうやなぁ、写真の人も、ここにいる人も
もともと僕には何の関係もない人達で。
レネエさんがわざわざ帰ってきてくれたのも、
高校時代の友人4人の、きっと当時の親切さや友情や
そういうものが彼女を動かしてくれたわけで。




最後はお父さんが自転車でドイツ国境まで送ってくれた。
本人に会えなかったかわりに
彼女が育った町の情景でも書こうと思って、
その雰囲気をじっくり感じていたので
なんだか思い入れのある去りがたい町やった。




それにしても
これは偶然よりもうれしく、でも予想なんてできないことで
なんといっていいかわからないけれど、
ほんと、こんなことってあるんやな、て思った。



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