ブリュッセル

土屋さんは4年前に旦那さんの赴任に伴って
ブリュッセルに来たらしい。
英語もフランス語もあまりしゃべれないままで。
「手紙を届けてそんな彼女の新生活を盛り上げてやってください。」
と依頼状には書いてあるけれど、

手紙を預かってからもう3年。
新生活どころか普通の会社の駐在員なら
もう帰国しているんじゃないかと思いつつも、
もしかしたら会えるんじゃないやろかと、その住所に向かった。

ブリュッセル滞在中、
僕が部屋をお世話になっているヤニックが、
「じゃあ、その配達の様子をビデオで撮ってあげるよ。」
とノリノリでブリュッセル中心部から10kmほどの道のりを
付いてきてくれた。

宛先に書かれてある
セントパンクラス通り
その名前を見つけた瞬間、一気にテンションはあがり、
「じゃあ、カウントダウン開始！」
と、番地を追っていくとすんなりその高級そうな
アパートは見つかった。

「じゃあ、ビデオの用意を」と中に入って
いくつかの郵便受けを見てみると、あぁ。

ＨＡＹＡＳＨＩさんはあるけれど、
ＴＳＵＣＨＩＹＡさんはなかった。

やっぱ、もう日本に帰られたかな。
で、付いて来たヤニックも意気消沈。

タバコを続けざまに吸って、
なんだか申し訳ないね。と別れる。

全然こぐ気がしないまま、
ダラダラと次の配達地のオランダに向かっていると
日本人サイクリストに会う。それがこの前の記事で書いた
ダイスケ君。
アドレス交換をすると、
苗字を土屋と書いてある。
えっ

「まさか当の土屋さんと関係ないよね？」
聞いてみると、

「全然関係ないっすね」だそうで。

まぁそうやろな。

しかしそれにしても
僕を取り巻く「運」なのか「神」なのかよくわからんものは、
洒落っ気があるようで、なかなかやりおる。

こんな些細な偶然でも、なんだか報われた気がして
こぐ気が増すから不思議だ。

偶然は楽しい。

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