ヤイラ
真夜2時。
犬が2匹、テントに向かって絶え間なく吠えている。
自分達の鳴声に興奮して、どんどんヒートアップしている。
その盛り上がり方が非常にうっとおしい。
少し、静かになったので安心して寝ていると
バラバラッとテントに水滴がかかる音。
あっ 小便しやがったな!
ファスナーを開けるとともに石を投げつけ、
ペットボトルの水を振りまき、
自転車につけてあるスタンド兼犬よけの棒を振り回して、
犬を追いかける。
犬逃げる。
それからは遠くで吠えるだけになった。
ほう、負け犬の遠吠え。
朝起きると、テントの後ろに動物の気配が。
朝ごはんも昨夜のクルド人の家庭でごちそうになる。
ありがとう。
こうやって、庭にテーブルと椅子を出して外で食事すると、
平和を満喫することができる。
食後のウンコをしに、家の便所を借りに行く途中
昨夜吠えていたと思われる犬が寝ていた。
めちゃくちゃでかい犬。1.5mはあるんやなかろうか。
これがトルコの牧羊犬か。
よくこんなのに向かっていったもんや。
ああ、恐ろしい。
小麦畑地帯は終わり、茶色い岩がむき出しの荒地が
増えてくる。
さぁ、本格的に登坂開始や。膝はまだ大丈夫。
今日も無理せず走行距離を60km程度に抑えようと思う。
人気のない坂を膝をかばって自転車を押して登っていく。
路肩で寝転がっている男。黒い革靴が汚い。放牧をしている。
「ジャポン、ツナミ?ふーん。」
彼は僕が外人であることも津波がどうであろうとも
本当にどうでもいいという顔をしている。
ただただ暇そうに寝転がっている。
世がfacebookでつながったって、革命が起こったって
変わらずな毎日を過ごすんやろう。
彼らが暇つぶしに積んだ石をみていると、
なにか祈りが込められているのか、なんだかとても静か。
世界の人口の大半はこういう人達が占めているように思う。
とても声高な表社会の一方で。
大きく下って川までたどり着き
ヤイラの小さい集落を越えると、
また少しずつ登り始める。
高度をあげて寒いところで寝るのは勘弁なので、
無理せずにその辺で寝ることにした。
一応、近くにいた人にテントを張ることを伝えておく。
「危ないことなんて、ここはなーんもない。」んだとさ。
夜、向かいの民家の明かりがやけに明るい。
ここは空が狭くて暗い。
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