アヨディヤ
寝ているうちに雨が降ったらしく、テントが濡れている。
テントをジッパーをあける音に気づいて
ダーバーの皆がテントを取り囲む。
「寒くなかったか?」
「雨に濡れていないか?」
「ジャーパーンのテントは高性能だ。」
寝起きからヘビーな付き合いだ。
オーナーと従業員に挟まれ、バイクに三ケツで村に向かう。
時速80kmでガタガタ道をかっ飛ばすオーナー。
生きた心地がしない。
途中チャイを二度飲んで
まずはオーナーの友人宅に行き、朝食をごちそうになる。
米とダールと野菜のカレー。
次にオーナーの奥さんに会う。
僕の好きなインド菓子をごちそうになる。
次にレンガ工場に行く。
レンガ工場のオーナーと話す。
そしてまたチャイを飲み、
咬みタバコを咬み、ダーバーに帰る。
昨日言っていた予定とはずいぶん違うけれど、
オーナーの紹介ですぐに村人達と打ち解けることができる。
「俺の友人だ。」と僕を皆に紹介するオーナーも
楽しそう。
「もう1泊していかないか?」
とオーナーがいう。
「いや、デリーに1週間以内に行かないといけないから」
と答える。実際は、そんなに急いではいないのだけれど
大勢を相手に振舞うのはなにか面倒。
1泊ぐらいがちょうどいい。
オ「じゃあ夕方までいればいい。」
僕「いや、今日は60km先のアヨディヤに行くから。」
オ「そうか。次はいつここに来るんだ。」
僕「5年後ぐらいかなあ。」
そうか、そうか、とオーナー
今までの代金を払おうとすると
「とっておけ。」という。
別れ際になって、悪人顔のオーナーが寂しそうな顔をしている。
100mこいで、なんかホッとしたような寂しいような
でも1泊がちょうどいい滞在期間だったなあと思う。
もうデコボコの田舎道を走るのが嫌になって
まっ平らなハイウェイをひた走る。
ヒンドゥー教の聖地アヨディヤ。
『ラーマヤナ』の主人公ラーマ王子の生誕地がある場所。
30年前にムスリムとヒンドゥー教徒が互いの寺院を焼き討ちしあった
そんな場所。
牛、猿、サードゥ。
どれも同じ数だけこの街に居そう。
細い路地にウジ殺しの液体の独特の匂いが充満している。
すぐに宿をいくつか見つけたけれど
「ヒンドゥー教の家族以外は泊まれません。」
「今日は結婚式があって満室でして。」
とそれぞれに理由をいわれて断られた。
ようやく泊まれる宿を見つけて
シャワーを浴びてベッドの上でくつろいでいると、
「外国人は泊まれないから出て行って。」と
さっき受付をしていた女の人がぶっきら棒にいう。
はぁ?だ。中国じゃあるまいし、こんな夜中に勘弁してくれと
理由を聞くと
「外国人を泊める許可を政府からもらっていないことを
私もさっき初めて知ったのです。」
「あなたが始めての外国人だったのです。」
ごねていると、
「では、私の夫がかわりの宿と部屋を見つけてきます。」
同じ値段だろうね?
「同じ値段でここよりもいいところを知っています。」
で、紹介された宿。
蚊だらけの部屋。なぜか部屋のライトのスイッチが
隣の共同便所の中にあって、トイレに入った人が
間違えて僕の部屋の電気を消すので、まいった。
毎日毎日一筋縄ではいかない。
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