駅西のラーメン屋にて

「さびしいやな」
どこの方言ともわからない言葉を何度もその人はつぶやいた。


明日朝、部員皆に辞めることを話すが、
怖気づいた私は歳の近い部の先輩を誘いだして、事前に打ち明けた。


「どう思いましたか、聞いた瞬間」「皆、怒りますかね」
私の卑しい質問には答えてくれず、ラーメンの汁をすすりながら
ただ淡々と旅と自転車のアドバイスをしてくれた。
普段から物静かな先輩は、いつにも増して余計なことは何も話してくれなかった。
怒るわけでもなく、驚くわけでもなく。


「さびしいやな」「それにしても、さびしいやな」
帰り道に口真似をしてみる。
異様に心に残る、その聞きなれない言葉を何度も口に出してみたが、
先輩の気持ちまで推し量ることはできない。
せめて書き残しておきたいと思った。
そして、いつかこのブログを目にしたとき、なぜだかはわからないけれど
いくらかは喜んでもらえるのではないかと私は思った。