キゴマ2
日本人とわかると、日本に連れて行ってくれ、
ばかりせがんでくるのに腹が立って、
「だいたいアフリカ人は目の前にあるチャンスも拾えないのに、
いけるわけないだろう」と言ったら、
「目の前のチャンスってなんだ?」「言ってみろ、この金持ち日本人」
と言われ、咄嗟に頭に浮かんだのが
「例えば、お前らはサツマ芋がとれるのに、
そのまま茹でるか焼くかしかしない。」
「その上、同じ焼き芋の店を何軒も並べて商売している。」
「頭をつかえよ、そんなの商売じゃないだろう。」
「揚げて砂糖をからめてみろ、今までの3倍の値で売れる。」
というと「その食べ物を一度食べてみたい」といい、
なぜかそれから毎日、大量の大学イモをタンザニア人の家で作っている。
なんか楽しいけど、なにやってるんだろう俺。
大学イモを店に並べて売っていても
客はけっこう無関心。
ジャッキー(今の相棒)が、なじみにどうやって作ったかを説明して
やっと買ってくれる。客は一口パクッと食べて
おいしいというのだけど、あまり感動した風でもなく、
向かいの露店に行き、もう人生で一万回食っているであろう、
焼き芋を注文する。
なんでかな〜、飽きないのかなぁ。
「なぁ、ジャッキー。
商売は、とにかく何かと何かのミックスなんだ。
今まで君らはサツマイモと火をミックスさせて、焼き芋を売っていた。
でも、それは簡単で誰でも思いつくだろう。
だからちょっと頭を切り替えて、
それに砂糖をさらにミックスさせたら、これができたわけ。」
「君らは車が欲しい、携帯電話がほしいというけれど、
あれもたくさんの何かと何かの組み合わせなんだ。
そのミックスの価値があの値段なんだ。わかるか、俺の言うこと?」
ジャッキーは人のいい笑顔を浮かべて、
わかるわかるというんだが。ほんまかなぁ、
まぁ彼もいっぱいいっぱい、みたいである。
アフリカ在30年、ニュートピアのカマウさん談
「一回ね、息子の寄宿寮にいったんですよ。
そしたら、毎日の食事は豆とウガリ、365日、豆とウガリ。
貧しいからそれしか出せないのじゃなくて、これは
もう食に対する意識がね、家畜と同じですよ。
ただ腹を満たせればいい、それなんですよ。」
あぁ、ただ今、実感中。
(焼きキャッサバ。この上なく素朴な味)
ジャッキー、今確実にお前は、
目の前で焼き芋食っているやつを超えたぞ。
一方で、これはとても重要なところだけど、
焼き芋とふかし芋だけで満足できる人生も
それならそれで、それでいいなら、それでいいような気もするんだな。
いつだか、フランスのテレビ番組を見ていると、
伊勢エビをおいしそうに調理していて、
おぉ、そろそろできあがるなと思っていたら、
「そうしたら、これをミキサーに移してソースを作ります。」
あほか、と思った。
絶対にそのままのほうがおいしいのに、ソースにしてしまうフランス人。
それと同じように
サツマ芋はそのままでおいしいのに、どうしてさらにシロップをかけるんだ、
日本人あほか、と彼らの感覚ではそうかもしれん。
ちょっと話はそれるけれど、
日本は四季があって自然が豊かで、と
僕もそういう風に日本を紹介してしまうけれど、
実際は日本は自然災害が多くて、元々は飢饉で人が
餓死するような風土で。
食料に関して言えば、ここアフリカの熱帯は、
放っておいても稲は育つし、魚は湧くし、果物は落ちてくるし、
よっぽど豊かだなぁと思う。
日本人が食べ物を発酵させたり、塩漬けしたり、あれこれ
いじくりまわして食べるのは単にそうして蓄える必要があったからで、
いつでもどこでも新鮮な食材を手に入れられるアフリカ人が
そういう過程なしでものを食べられてきたというのは、全く別の
意識を食べ物に持っても仕方ないのかもな、と思う。
さて僕は大学イモもスィートポテトもある方がいいけれど、
でもやっぱ、皆が思っているほど当たり前には
大学イモのある生活がいいとは言えないのだと思い、
そのへんのところが実際は知りたいところでもあるので
だからもうすこし、ジャッキーの大学イモ屋を手伝おうと思う。