エルサレム

昼ごろ、エルサレムの宿に着くと、
「これからパレスチナ人の村に行って
囲碁をやるんだけど、人手が足りなくて。」
「手伝ってくれる?」
と。


棋士の安田泰敏九段は「ふれあい囲碁」という活動を通して、
他人とコミュニケーションをとる楽しさを教えている。


「囲碁のルールを知らない」というと
「相手の石を囲めば勝ち!という単純なルールだから
二歳児でもできるよ。」と。


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パレスチナ人の村は細い路地を進んだところに密集してある。
彼らはそこがヨルダンの領土であった頃から住んでいるのだけれど、
現在そこを実効支配しているイスラエル政府によると
「不法占拠」であり、退去命令がでている。


そこは国際法では「パレスチナ自治区」であり、
イスラエルがあれこれ言える場所ではないのだけれど、
あろうことか
実際にイスラエル政府によって強引に解体された家屋もあり、
しかもその解体費用は家屋の所有者、パレスチナ人
請求されるんだと。
国際政治のアナーキーさを目の当りにする。


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村の集会所で「ふれあい囲碁」が始まる。
30分ほどはおとなしく囲碁に熱中していた子供達も、
1時間後には空手の真似事をし出して収集がつかなくなる。
おそろしくしつけがなってない。


子供達が「秘密の場所」を見せてくれる。
そこには、最近このエリアに打ち込まれた催涙弾が
集められている。


イスラエルのパトカーがこのエリアに入ってくると
子供達は投石をする。
それに対してイスラエル警察は催涙弾を撃ってくる。
催涙弾といっても直撃すれば死ぬし、
至近距離で吸い込めば、呼吸困難で死ぬ。
参加者の一人は13歳。この歳ですでに逮捕された経験がある。
警察に投石したという罪で。


いつ「不法に」自分の家が取り壊されてもおかしくない、
いつ「不法に」殺されてもおかしくない
そんなことが日常の場所で暮らす子供達。
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(銀色のが催涙弾の殻)


翌日、安田棋士について
今度はイスラエルの小中高一貫教育高に行った。
日本のテレビクルー、新聞社も取材に来た。


そこはユダヤ教徒とその他の生徒の割合が半々という
イスラエルでもレアな学校。
宗教別、男女別がイスラエルでは普通なのだと。

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昨日とは打って変わって
きれいな校舎とちゃんと最後まで話を聞く「できた子供達」。


その日、宿に帰った後で
「ふれあい囲碁」に誘ってくれたコーディネーターの人が
「私は昨日のパレスチナの子供相手のほうが意味があったと思う。」
と言った。


「たしかに今日の子供は賢くて、最後まで話を聞いてくれて
それは良かった。」
「でも、パレスチナの子供と囲碁をしているときに近所の
女性が覗きにきて『これから毎週来てくれたらいいのに』って
言ってうれしそうな、寂しそうな顔をしていてね。」と。
「あの子供達の家は、男性が皆出稼ぎに出てしまって
家長が不在、遊んでくれる人も遊ぶ所も制限されて、
それで催涙弾の殻を集めたりして遊んでる。」


「遊んでほしい」っていう子供の素朴な
それでいて一番の欲求に応える。
それこそ「ふれあい囲碁」の理念にかなっているんじゃないかと。


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(次の一手)


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