アブルディース
日の出と共に起き、
いつもより早めの出発。午前7時。
このあたりは人影がまばらだ。
シーズンオフで営業していないだけなのか
潰れてしまったのか、立ち並ぶリゾート地は
どれも廃墟みたいだ。
向かい風を北上してくるフランス人カップルに出会う。
57歳と56歳。
地中海を一周する旅行なんやって。
聞けば、昨日は砂漠でテント泊だったらしい。
やるなあ。
ヨーロッパの壮年サイクリストは多い。
60代はざらにいる。
「フランスの南の方に住んでいるの、
フランスに来ることがあったら連絡しなさい。」
シナイ半島は砂漠だ。
海風のとどかない内陸に入ると30℃近い暑さ。
油断していて水を少量しか携行していない。
アップダウンの続く道で水を切らしてしまい、
30キロ水なしで走る。
初めての経験だったけれど、辛かった。
水、水、水のことしか考えられない。
せっかくの追い風デーだったのに、
水なしで走ったダメージがでかくて100キロほどでへばった。
さあ、今夜の寝る場所をどうするか、
こんなときに限って
油田地帯で警備つきの浜がずっと続いて
テントを張らせてもらえそうにない。
日が落ちてすぐ、
道路わきの兵舎から
陽気な「ハロー」という声が聞こえてきたので
その建物に行って「横にテントを張らせてくれないか?」
と聞くと、二つ返事でOKだった。
しかもテントではなく、中の部屋に泊まっていいとのこと。
いいのかなあ、と思いつつ
中に入るとご飯をふるまってくれる。
聞くとここは兵舎ではなく、水道会社の宿舎で
沿岸警備の兵士も一緒に寝泊りしているのだと。
これからいくシナイ半島の先っぽ、
シャルムエルシェイクは一大リゾート地で
地元の水だけでは需要に追いつかず、
わざわざスエズから水を送っているのだと、
ちょうど中間地点にあるここは、
その配水を加圧するところなのだと、教えてくれた。
サッカーアジアカップの話をしたり、
たまたまやっていた日本を紹介する番組を見たりして
夜をすごす。
ほんと日本のサッカーが強いおかげで
旅行中、話題に困らなくてすんでいる。
あてがわれた部屋は蚊の巣窟だった。
腹に一杯溜め込んでいる血は
前にこの部屋に泊まった人のやろう。
叩くたびに手に血がつくのが気持ち悪い。
部屋の蚊を全滅できそうにもなかったので
テントを部屋の中で張った。
100%安全な夜。
こんなところで寝れるんや、というところで
寝て快感を得るのが自転車旅行。
にほんブログ村←横のバナーを押すと、ランキングがあがります&見えます。