シラチャ2
タイ宛の手紙は3通あって、そのうちの1通がここシラチャ。
残りの2通はバンコク。
あて先は、シラチャ・シティホテル。ミス.ブンダリク。
シティホテルは日本人が出張や家族連れでも利用する
一泊約2000バーツからの中級ホテル。
ちなみに今僕は200バーツの安宿。
レセプションで、「ブンダリクさんという方が泊まっていると思うのですが」
と尋ねると、
「このホテルのオーナーです。秘書に今、会える時間があるかどうか聞いてきます」と。
そんな偉い人だったとは。
僕はもう汚い世界の人間なので、自分の格好やら体臭やらが
こういうところにくるとても場違いな気がして恥ずかしい。
あせった、びびった。
数分後、スタッフを二人引き連れてその人は現れて。
僕が持っている他の2通はこのブンダリクさんの部下宛
だと聞いていたのだけれど、一緒にロビーに現れた二人がその2通の受取人だった。
「バンコクがひどい状況なので、こちらの事務所に移ってきたのです。
2人とも普段はバンコクにいて、3人が一緒にここにいることは
とても珍しいことです。」
3人とも、まさかの手紙の到着を喜んでくれた。
楽しみにしていたバンコクにはしばらく行けそうにないけれど、
でも会おうと思っていた人にここで会えている。
禍福はあざなえる縄の如し。
「好きなものを食べてください」と通された日本食レストラン。
テレビに目がいった。白石康次郎。
お遍路で立ち寄った温泉を思い出した。
あの時もテレビで白石康次郎。
「自然を力でねじ伏せようとしても無理だ。自然に、遊ばせてもらう」
お遍路のときは、彼の言葉はとてもハードルが高くて、
耳に残してもなにか悔しいだけだったけれど、
今は素直にそうかと聞ける、そして少しわかる気がする。