M氏

ここ数日専ら読書、それも以前に読んだことのある小説ばかりを。


山田詠美『ぼくは勉強ができない』を手に取ると、
この忌々しい病による閉塞感やイライラとは無縁のすがすがしい気持ちになり、
つづいて鷺沢萌『駆ける少年』『川べりの道』、宮本輝『螢川』
とあぁもうどれもすばらしく心落ち着かせてくれる作品ばかりを堪能。
この時間だけは狂気とは無縁。
凡人が到底たどりつきもしない彼らの発明による感情の襞を眺めて、
その才能に敬服するのだけれど、読者を墜とすのではなく、幸せにしてくれる
この作家達と作品を、私がこうも見事にいわゆる失敗もなくこの異常な精神の
なか次々と読んでいけるのは、この作家達が皆、私が18歳の頃出会い、
今も強烈な印象を残すM氏が好んだ人達だからだろうと思う。


M氏と私は同じ寮に住んでいた。
「君はいつまでも子供子供してるね」と私にいつも言い、自炊の仕方と、
大阪の異端児というものを教えてくれた。
そして、彼はくだらない大学に1年もしないうちに見切りをつけて、
何やら高級なアルバイトをして、夜中にかえってきては今はフランス文学が好き、
なんていいつつカナダへ飛び立った。
寮を出るときに、彼は数冊の文庫本を私に預けていったわけだけれど、
その中に上に書いた作家達の本があったと記憶している。あれから10年経った。
その数冊からはじまって、それまで『深夜特急』以外に小説など滅多に読まなかった私が、
宮本輝が好きな作家は山本周五郎で、なんてたどっていくうちに、
3年監禁されても飽きることはないぐらいの本を買ってしまった。
よくぞ、ここまでため込んだもんだ。


さてM氏はその後日本で看護師として働きはじめ、その苛酷な労働ゆえになにやら
心の病になったのだと数年前、何かの拍子に私に伝えた。私は臆病であるから、
心の病がどういうものなのか聞いていないのだけれど、その後は年に1、2度
メールを送ってみる程度になり、何やら近づきづらかったのは事実。


宮本輝『泥の河』の冒頭、安治川やら堂島、土佐堀といった地名がでてきたとき、
よどんだ川の情景と共に、遠い昔に中之島図書館は最高だといってメールをよこ
した彼を思い出し、読み進めるよりも今沸いてきた記憶を少し書き留めたくなった。


彼は、私がバリで当初ホームシックだとかいっていたブログを見て即座に「それは
パニック発作と予期不安の典型的症状。君はそんなに強い人間ではない。帰ってこい。」
とメールをよこした。


正直いってあのときはカチンときたものだが、最近はこの華麗な無駄のないメールを
時折、メールボックスから引き出して眺めては感嘆している。
その後も適切なタイミングで適切な分量のメールを彼は数通くれた。



あぁつまりは、君のよこした今昔のものが今の私に役だっているのだということを
ブログで伝えてみている。
こういうのも、たまにはおもしろいだろう?




自分のブログだから好きなことを書いていいだろうに、
最近ちと怖くなってしまったからな。リハビリだ。




今夜は君の好きな山田詠美『晩年の子供』を読む。

晩年の子供 (講談社文庫)

晩年の子供 (講談社文庫)



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