風邪

あぁきたな、と思った。
長いバス移動のあと、小さな駅の床に寝そべって列車の発車時刻を待っていると
体が芯から冷えてきた。


満員の列車に乗り込んだら、どんどん熱があがっていくのがわかり、
鯉のように口を上にあけて呼吸をするのがやっとで。
列車の振動とインド人のわけのわからない大声が頭に響く。
夕方に目的地のホスペットという町に着いたときには、歩くこともままならない。


サイクルリキシャにのり、ホテルにたどり着くと
なんでもいいから寝させてくれと、適当に金を払ってベッドにもぐり込んだ。


夜半、頭の痛さに耐え切れず目が覚めた。朦朧とした意識の中で熱を計ると
40℃を越えていた。あぁ、アスピリンも効かない。
病院に行かないと、とホテルを出た。


暗がりで通行人に
「ホスピタルはどこだ?」と英語で尋ねると、「ここだ!」という。
あたりを見回しても、それらしき建物がなく、
「俺をからかっているのか?」「ホスピタルはどこだと聞いているんだ!」
「ホスピタルが何か知っているのか?」
と絶体絶命の心境で怒ると、彼は何を言ってるんだという顔で
「Yes! Here is Hospet!」と地面を指差して言う。
HospetとHospital、なんとなく似ている単語の運命的な出会い。
勘弁してくれと思ったが、なぜか楽しかった。


その後、どうにかして病院へ行き、
得体の知れない赤と紫のカプセルをもらい、数日後、私は楽になった。


今、風邪をひき、熱が出ている。
寝床でいつも以上に、9年前のインドが鮮明に思い出されたので書き留めておく。
あの時食べたかった粥を一つぐらい持って行こうか。



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