マークー - 自転車世界一周配達日誌archives

その日は快晴で暑く、半そで半ズボンになりたいけど、
法律で半ズボンが禁止されているイランの走行にイライラしていて。

遠くに真っ黒な雲が見えて。
こちら側は真っ青なので、近づくと
ちょうど空が真っ二つに割れたみたいだった。

しばらく進んで、道路の上にはっきりと境界が見える
その雲の下に入ると、突風が吹き、あたりが暗くなって、
それまで30℃近かった気温が一気に10℃まで下がった。

風が収まったかと思うと、
突然、バババッと音を立てて飴玉大のヒョウが落ちてきて、
これが痛いなんていうものではなく、逃れたいけれど
荒野の真っ只中で屋根のあるものは何もなく。

「あぁ、やばい」
と思って、直立している看板の下に自転車ごとうずくまると、
（そんなことをしても無意味なのはわかっているけれど）
遠くで車がパッシングして、中から人が手を振っているのが見えた。

すぐに自転車を放り出して、車まで走り、中にはいる。
「ノープロブレム」とイラン人のおっちゃんが言う。
ボンネットにヒョウが当たってガンガン鳴っているのに、
おっちゃんとても普通でなんだか気が抜けた。
気づくと、腕と背中がズキズキと痛い。

そしてヒョウも雨もピタッと止む。
おっちゃん「OK」と行って去る。
その間、1分あったかなかったか、恐ろしい時間だった。
あんな快晴からこうも一気に変わるなんて。

その後も、この日は晴れたり急激に曇り雨が降ったり、
雲が生き物のように思えて、怖かった。

なにより、何もない荒野がこんなに怖いものだなんて。

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