手紙

配達依頼のメールが多くなり、皆さんの思いを聴く毎日。
手紙を届けるということが血の通った使命になってきた。
もはや後付の企画ではない。すごいことを請負った。

手紙について考えるとき、詩人との会話を思い出す。
「そろそろわかっていると思うが、ネットの世界に大切な話などどこを探しても載っていない。」
たしかにここには宛名のない、もっともらしい話が載っているだけかもしれなくて。

ネットはそんな無味無臭のものだから、たまに人は書き足りない気持ちを
手紙にしたためたりするのだけれど、手紙を書いても伝わらないことはきっとある。
ためらいを思わせる肉筆でも、涙の跡がついてもいても伝わらない気持ちがある。
両親へ、好きな人へ、私も手紙を書いてみては考えがまとまらなくなる。
一番書きたいことは書けないことだと、気付く。

でも手紙はそういうもんだと、皆が知っていて。

手紙を出した日は晴れていても、届いたときは土砂降りであるかもしれないことを。
届いた頃には互いの心が変わっているかもしれない危うさを。
書き残したことがあるということを。
承知の上で心を通わそうとする。

この地球の人々が書き残したものについて思いを馳せると、
地球はなんて優しい塊なのだろうと。

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