コルカタへ
99年2月
私はインドのコルカタ(当時はまだカルカッタと言った)に1人降り立った。
初めての海外旅行で、税関の通り方や手続きの勝手がわからない。
税関の前に列ができており、とりあえず皆と同じように並んだ。
役人が順に問いかけている、
「目的は観光か?」「今日はどこのホテルに泊まるんだ?」
私はまったくホテルの予約もしていないので何といっていいやらわからない。
私の順番が近づいてくる。
私の前の男に役人が聞く「今日はどこのホテルに泊まるんだ?」
男が答える「サダルストリート」
役人が通ってよしの合図をする。
私の番。
「今日はどこのホテルに泊まるんだ?」
私は答える。
「サダルストリート」
通ってよし、と役人が首をふる。
空港をでて、タクシーに乗る。
「サダルストリートへ」
と私は言った。
着いてみるとサダルストリートはホテル名でもなんでもなく、
バックパッカー御用達の安宿が集まる通りだった。有名らしい。
空港から到着するまでの間の流れていく風景は思い出せるのだけれど、
私がまだ見ぬサダルストリートについて何を考えていたか、
今となってはわからない。