徳島2

終了だと思って次のことに頭を切り替えていたら、
一通の電子メールが音もなく届いていて。
差出人は南アフリカのドリスさん、
件名は「Klass's wife response」。



最後の手紙配達の顛末はこうだった。
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あて先は、コーイチさんが南アフリカで働いていた時、
プロジェクトに参加していていた農家のリーダー
クラースさん。


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でも、クラースさんは僕が自転車こいでいる間に
事故で亡くなったと行く前にコーイチさんから聞いた。
でも、せっかく南アまで来たので家族宛てに手紙を届けることにした。


朝、クラースさんの村に向けて出発しようとすると、
昨晩、泊まらせてもらったドリスさんが
「その住所は間違っていないけど、とても大きな村だから
大変だと思う。」
「よければ、車で送らせてほしい。」
と言った。


今考えると、自転車で届けることに固執していた僕には珍しく、
というか、どうしてなのか不思議なのだけど
僕はその言葉に甘えて車に乗った。
まぁ、実はもう早く終えたかったのかもしれない。
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その村は舗装路がダートにかわった先にあり、
住民のほとんどは英語が話せなかった。
ドリスさんに通訳してもらい、
「クラースさんの家族はどこにいますか?」
と聞いてまわると、


最初は旦那さんのクラースさんが存命だった時の家、
移った先の家、
地域のコミュニティセンター、
と移動し、結局クラースさんの妻は今、
どこかに買い物に出ていることがわかった。


彼女の携帯に電話をかけても出なかった。
思案したけれど、手紙をそこで働く女性に渡し、
僕は自転車を停めてあるドリスさんの家に帰ることにした。


「仕方ないわよ。」とドリスさんに励まされつつ、
車で帰っていると、眠気が襲ってきてウトウトしていた。


何十分か走った頃、
ドリスさんの携帯が鳴り、
クラースさんの奥さんにつながった。


ドリスさんが興奮した声で、
「彼女は今、私達の目の前にあるショッピングセンターにいる!」


そのショッピングセンターに入って、
しばらく人ごみを探し回ると
「いたわよ。」とドリスさん。



あまり、事情が飲み込めないらしく、
警戒した様子の奥さん。
まぁそりゃそうだろう。


経緯を説明してもらって、
一緒に写真を撮る。
自転車なし、手紙なしのその場では
それがコミュニケーションの限界だった。
自転車で来なかったことを後悔した。
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「家に帰ったら手紙を受け取ってください。
ご主人の昔の友人からですよ。」
そう言って別れた。

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その返事が今、メールで来た。
手紙の差出人のコーイチさんには、また別の返事がいっているかもしれない。


Hi Hiroki

First i like to say thanks for visiting my place.
Secondly i appreciate how JICA team worked with my husband Klass Malapela.
And i also like to apologise for not informing you about klass's funeral.
He passed away in 2008.

We love you so much and GOD BE WITH YOU ALWAYS

From Klass's Family
Agnes Klass's Wife
Mahlatse Klass's Son
Naledi & Kgahlego Klass's Daughters




件名を見て、ハッとした瞬間、
あのアフリカの違う時間の流れが、ふっと自分の今の時間に
割り込んできて、辺りの景色を変えてくれた。


そして、僕はいつもそういう風な感覚を
届けた先に与えていたんだな、と今さら気づいた。



このメール、
内容は当たり障りのないものだけど(だから載せるのだけど)、
最後の家族一人一人の名前を見ていると、感じるものがあった。
いつもの配達と同じように
こわばった顔が友人の名を聞いた途端に笑みに変わる
あの瞬間と、
手紙を読む人を囲む誰もが静かになっている、
あの何ともいえない雰囲気を想像した。
なぜかロマンチックなことを言うのがはばかられる、
この日本で。


違う時間の流れを心のうちに持つことは、なんというか
それは心を繊細にし、強くもする。
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そういや、
南北アメリカ大陸にも手紙は預かっているのだけど、
たぶん30年後ぐらいに行きます。
それまで持っていてもいいでしょうかね。


それと、日本に住んでる人宛てに預かった手紙が
数通あります。
いつ届けられるんでしょうか、お楽しみに。




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